買うコツ

「中古戸建てって本当に大丈夫?」不安を払拭&目利きをするための3つのポイント

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高橋 正典

中古戸建ての購入に不安を感じていませんか?中古戸建ての状況は、築年数やメンテナンス状況などによって大きく異なります。たとえ同じ築年数であっても、安心できる物件か否かは状況次第です。

本記事では、中古戸建ての購入に際しての不安を払拭し、安心して購入できる物件を目利きするためのポイントについて、価値住宅 代表取締役の高橋 正典(たかはし まさのり)が解説します。

1. 中古戸建ての購入……ここが不安!

これまで数多くの中古戸建てを仲介してきましたが、買主さんの多くが次のようなことに不安を感じています。

耐震性

中古戸建てを購入される方が最も不安に感じているのは、耐震性です。やはり、一戸建てはマンションと比べて耐震性に不安を感じやすく、構造や築年数などによっても差が生じやすい部分だといえます。耐震性を判断するときに「旧耐震基準」か「新耐震基準」が分かれ目になると考えている人も多いでしょうが、実は木造戸建てについては新耐震基準より新しい「2000年基準」があります。

「耐震性が不安……」と漠然と考えている人は多いですが、2000年基準やより耐震性の高い耐震等級といった知識を持っている方は少ない印象です。耐震基準は、あくまで最低限守らなければならない基準。新耐震基準より2000年基準のほうが耐震性は高いですが、すでに築20年余りまでの一戸建てはすべて2000年基準で建てられています。また、耐震性は、建築後ずっと維持されるものでもありません。

一戸建ても人間と同じです。40歳で健康な方もいれば、足腰が悪い人もいます。不安を解消するには、建築時期だけで耐震性を判断するのではなく「現状の耐震性」を知る必要があるでしょう。

保証

基本的に、中古住宅は新築住宅のような長期の保証はありません。中古住宅の売主は、契約と適合していない不具合に対して補修などの責任(契約不適合責任)を負わなければなりませんが、個人が売主の場合は任意規定。つまり、免責(責任を負わない)としたり、期間を短くしたりすることができます。

境界・隣地トラブル

これは買主さんから聞かれるというより必ずチェックしていただきたいことなのですが、一戸建ては少なからず隣地とのトラブル、あるいはその火種を抱えています。たとえば、次のようなことが挙げられます。

  • 草木や塀などの越境が見られる
  • 境界が確定していない
  • お隣の水道管が敷地内に通っている

売買時点でトラブルになっていなかったとしても、このような事象が見られれば、今後トラブルにならないとも言い切れません。買主さん自らが調査することは難しいでしょうから、不動産仲介会社に境界がどうなっているかについて必ず確認すべきです。

中古戸建ての購入……ここが不安!
  1. 耐震性
  2. 保証
  3. 境界・隣地トラブル

2. 中古戸建て購入の不安を解消するための3つの方法

不動産を見るときには、買った後にいかに安心して住めるかという視点を持つことが大切です。耐震性や保証、境界、いずれも買った後の安全や安心を担保するために確認すべき事項。境界については、不動産会社に確認すれば把握できます。一方で、耐震性や物件の状況に関しては、見ただけではわかりません。また、中古物件の契約不適合責任の期間は多くの場合、3ヶ月など限定的です。だからこそ、買主自らが不動産会社に対して建物の検査や保険の加入をしてもらえるよう、積極的に働きかけをすべきだと思います。

(1) インスペクション(建物状況調査)を実施する

インスペクションとは、住宅の検査のこと。第三者機関の建築士などが耐震性にも影響する基礎や外壁のひび割れ、雨漏りの跡や劣化、不具合の有無などを調査します。中古住宅に対する不安の多くは「わからない」ことによるもの。第三者のプロに点検してもらうことで、建物の状態をある程度可視化された状態で購入することができます。

(2) シロアリ点検をする

木造住宅の大敵はシロアリです。シロアリは木材と暗く湿った環境を好むため、主に木造戸建ての床下が食害を受けやすいといわれています。国土交通省の調査によれば、木造戸建ての2割にシロアリ被害が見られるといいます。

建物検査でも床下の点検はするものの、基本的には点検口からの目視検査です。シロアリ被害は床下の奥に潜んでいることもありますから、できる限り専門の会社にシロアリ点検を依頼することをおすすめします。点検会社は、床下に入り込んで被害の有無を確認します。

(3) かし(瑕疵)保険に加入する

かし(瑕疵)保険とは、購入後、建物の構造の重要な部分に不具合があることが判明した際に、補修費用等を補償してくれる保険です。加入者は不動産会社や検査会社などになるため、買主は仲介会社などに加入を相談することになります。

図表1:かし(瑕疵)保険の対象
概要図
かし(瑕疵)保険は、万一の補修が必要な場合に高額になりがちな、漏水や建物の構造で重要な部分の不具合を補償する(図:住宅あんしん保証の図を元に中古住宅のミカタ編集部作成)

かし(瑕疵)保険を付帯するには建物検査を受ける必要がありますが、検査で見落とされる不具合や見えない場所の不具合もないわけではありません。まだ認知度は高くありませんが、特に中古戸建ては、かし(瑕疵)保険への加入がマストになってくると思います。

中古戸建て購入の不安を解消するための3つの方法
  1. インスペクション(建物状況調査)を実施する
  2. シロアリ点検をする
  3. かし(瑕疵)保険に加入する

3.「理想」と「リスク」のバランスとは?

建物検査とシロアリ点検をして、かし(瑕疵)保険に加入する……これが中古住宅を安心して購入するうえで行っておきたいことです。しかし、実際には、検査や保険の加入ができないことも少なくありません。

買主が選ばれる!?

日本の不動産市場は、2013年頃から「売り手市場」が継続しています。要は、不動産の流通量が少なく、良い物件には複数の購入希望者が集まってしまう状況です。その状況で何が起こるのかというと、買主さんが選定される立場になるのです。欲しい物件を選んで購入する買主さんが、逆に選定される。このとき比較されるのは、売買条件です。

たとえば「境界を確定してほしい」という購入希望者と「境界確定しなくてもいい」という購入希望者がいれば、売主に選ばれるのは後者でしょう。同様に「インスペクションを入れたい」といった希望も売主側からすれば手間になりますので、建物検査なしにそのまま買ってくれる人が優先されてしまいます。かし(瑕疵)保険への加入にも検査が必要であるため、所有者である売主さん側の了承が得られなければ加入できません。

リスクと理想のバランス

「境界が確定していなくても売却できる」「インスペクションがまだまだ一般的ではない」といった日本の中古不動産市場にも大きな問題がありますが、この市場の中で欲しい物件を手に入れるには“リスクと理想のバランス”を考えなければならないと思います。

つまり「検査できない」「境界が確定していない」という買主さんにとってのリスクを受け入れてでも、購入したいかどうか、ということです。どこまでリスクを受け入れて、どこまで理想を通すのかのバランスを、物件の販売状況やその他の購入希望者を見て考える必要があるでしょう。

日本の不動産市場も変わり始めている

個人的には、中古戸建てを購入する以上、インスペクションやかし(瑕疵)保険は必須だと考えます。健全な中古住宅市場を形成するには、まずこの2つの仕組みの認知度を上げ、買主さんが希望すれば必ず実施してもらえる体制を整えなければなりません。

徐々にではありますが、日本の不動産市場も変わり始めています。2018年には、不動産会社にインスペクションの説明が義務付けられ、売買する当事者の利益を守ろうとする不動産会社やエージェントも増えてきています。

「理想」と「リスク」のバランスとは?
  1. 買主が“選ばれる”ことも
  2. 理想だけでは欲しい物件が買えないこともある
  3. 日本の不動産市場も変わっていかなければならない

4. お宝物件もたくさん!?中古戸建ての3つの目利きポイント

できる限り理想通り、かつ、安心して中古戸建てを購入するには、買主さん自身が物件や不動産会社を見極める必要があります。

(1) 築年数だけで決めない

中古戸建ては「築10年で価値が半分」「築20年で価値がなくなる」と決めつけられていた時代がありました。今ではこのような査定をする不動産会社もだいぶ少なくなってきましたが、一戸建ての価値の低減率はマンションと比較して非常に高いものです。ただ、建築やメンテナンスがしっかりしていれば、木造であっても30年、40年と住むことはできます。言い換えれば、格安な中古戸建ての中にもお宝物件はあるということ。もちろん全ての築古戸建てがお宝物件ということではありませんが、しっかり検査したうえで問題がないようであれば魅力的だと言えるでしょう。

逆に、築浅であれば安心とも言い切れません。見た目は綺麗な中古戸建てでも、建物の内部は損傷が激しいということもあります。一戸建ては、建築時の性能やメンテナンス状況によって劣化スピードは大きく異なります。築浅であっても、中古戸建てを購入するならインスペクションやかし(瑕疵)保険は不可欠でしょう。

(2) 立地が資産価値を左右する

一戸建てを購入するうえでは、建物だけでなく「立地」をよく見ましょう。建物の価値はやがてなくなりますが、土地の価値は残ります。「終の住処(ついのすみか)」として一戸建てを購入する人も少なくないでしょうが、働き方や暮らし方は多様化しており、今後、住み替えや売却、自宅以外の活用をする可能性もゼロではありません。

人口が減り、空き家が増加し続ける今後の状況を考えれば、資産価値が維持できる土地は限定されるでしょう。どんなに家が古くなっても、都市部の駅前であれば必ず売れます。「駅前」は1つの例です。「再開発が予定されているエリア」「人口が増えている都市」なども、資産価値の向上、あるいは維持を期待できます。

(3) 不動産会社(エージェント)を見極める

お宝物件と出会い、購入するには、物件だけでなく不動産会社を見ることも大切です。私が代表を務める価値住宅では、売却する中古戸建てのすべてにインスペクションを導入しています。しかし、大半の不動産会社はインスペクションを入れたくないと考えているのが現状です。その理由は「早く売りたい」という不動産会社の都合によるもの。多くの場合、売主さんがインスペクションを断っているわけではないのです。

私は、インスペクションが入れられない一戸建ては買うべきではないと思っています。とはいえ、欲しい物件があれば先のとおり「リスクと理想のバランス」を考えなければなりません。「安心」を優先させるのであれば、しっかり検査させてくれる物件を購入すべきでしょう。

そして、売主さん側の不動産会社だけでなく、買主さんが不動産会社も見極めることが大切です。中には、インスペクションやかし(瑕疵)保険についてよく知らない担当者もいますし、実施したことのない不動産会社もたくさんあります。買主さんの利益を守る立場であるべきプロが、インスペクションもかし(瑕疵)保険も知らないのは大問題です。「インスペクションしたほうがいいですかね?」「かし(瑕疵)保険に加入したいのですが……」という相談をしてみて、納得のいく回答をしてもらえない不動産会社は避けたほうがいいと思います。

お宝物件もたくさん!?中古戸建ての3つの目利きポイント
  1. 築年数だけで決めない
  2. 立地が資産価値を左右する
  3. 不動産会社を見極める

5. 中古戸建ての「現状」を把握することが安心につながる

中古戸建ての良し悪しは、築年数や見た目で判断されがちです。しかし、同じ築年数であっても中身は物件ごとに異なり、いくら綺麗に見えても見えない部分が深刻な被害に遭っている可能性もあります。

不安を解消し、いい物件かを判断するには、検査が不可欠だと私は考えます。加えて、購入後の安心のためには保険も必要です。安心して中古戸建てを購入するための仕組みや制度は、ひと昔前と比較すれば格段に整っています。“リスクと理想のバランス”を考え、このような新たな制度や仕組みを取り入れながら中古戸建ての目利きをしましょう。

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高橋 正典 (たかはし まさのり)
不動産コンサルタント、価値住宅(株) 代表取締役。金融機関勤務を経て、都内不動産デベロッパー立ち上げ期に参画し、同社取締役及び関連会社の代表取締役を歴任。エージェント(代理人)型の不動産会社として、2008年に(株)バイヤーズスタイルを設立、代表取締役就任。2016年10月に会社名を価値住宅(株)へ変更。中古住宅(建物)を正しく評価し流通させる取組みを全国へ拡げるため、VCネットワーク「売却の窓口®」を運営し、その加盟店は全国へ広がっている。不動産流通の現場を最も知る不動産コンサルタントとして、各種メディア・媒体等においての寄稿やコラム等多数。