買うコツ

プロが教える「不動産ポータルサイトの見方・使い方」。メリット、活用時のコツや注意点を紹介!

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高橋正典
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畑中 学

SUUMO(スーモ)や LIFULL HOME’S(ホームズ、以下HOME’S)、at home(アットホーム)などといった不動産ポータルサイトは、いまや物件探しに不可欠な存在です。一方で、中古住宅は購入時にリフォームをしたり、検査(インスペクション)の実施やかし(瑕疵)保険への加入なども検討したりする必要もあることから「物件ありき」の購入が必ずしも合理的な選択ではないこともあると専門家は言います。

本記事では、価値住宅の高橋正典(たかはし まさのり)と武蔵野不動産相談室の畑中学(はたなか おさむ)が「マイホームの購入を検討している人の不動産ポータルサイトの正しい使い方」をテーマに対談した様子をレポートします。

1. 不動産ポータルサイトとは?どんな仕組みで成り立っているの?

不動産ポータルサイトとは、複数の物件情報を公開しているウェブサイトを指します。ポータルサイトの運営は物件情報の「掲載費」でまかなわれていると言います。

不動産会社が掲載費を負担

高橋:不動産ポータルサイトに物件を掲載するには、費用がかかります。掲載費用を負担するのは、不動産会社です。基本的に、売主が仲介手数料とは別に掲載費を支払うことはありません。不動産ポータルサイトへの掲載は、仲介手数料の中で行う営業活動の一環ということですね。

「物件を掲載している不動産会社からしか買えない」というのは勘違い?

畑中:基本的には、どんな物件であっても、ポータルサイトに物件情報を掲載している不動産会社だけではなく、ほかの不動産会社でもその物件の購入を検討する人に紹介することができます。業界用語ではそれを「客付(きゃくづけ)」と言います。

しかし、現実問題として、売主から物件を預かった不動産会社が売主と買主の両方から仲介手数料を得る「両手取引」を狙って他社からの客付を拒むこともあります。つまり、こういった不動産会社が掲載している物件は掲載元に問い合わせなければ買えないということです。

高橋:客付を拒む行為は、完全に違法です。ただ、このような不動産会社は一部です。不動産ポータルサイトに掲載されている物件の多くは、不動産会社のネットワークシステム「レインズ(REINS、不動産流通標準情報システム)」に登録されていますから、どの不動産会社でも紹介できます。誤認している人も多いのですが、そういった意味では「物件の情報量」はどの不動産会社も同じということですね。

畑中:「仲介手数料ゼロ」「手数料半額」という物件も目にしますが、こうしたケースの多くは、既に売主から仲介手数料を確保していたり、売主からも買主からも仲介手数料を受領できる両手取引を前提としているなどの場合が想定されます。他社からの客付を拒んでいる物件の可能性もあります。

高橋:ただ、新築物件や買取再販物件など不動産会社自身が売主の物件は「仲介」にあたらないため、手数料ゼロということもあります。「仲介手数料ゼロ」という情報だけでは不動産会社の立ち位置やスタンスを判断することはできませんので、よく確認する必要があるでしょう。

同じ物件が何件も登録されているのはなぜ?

畑中:同じ物件が複数掲載されていることもありますが、これは売主と直接媒介契約を結んでいる仲介会社が広告許可を出して、他社でも物件を掲載できる取り決めになっているからと言えます。複数の不動産会社が掲載している物件は「不動産会社を選べる」というサインでもあります。

高橋:掲載許可を出しているということは、その不動産の売却を依頼されている不動産会社は両手取引を狙っていないということですからね。

不動産ポータルサイトの仕組み
  • 掲載費を負担するのは基本的に不動産会社
  • 掲載している不動産会社からしか買えないわけではない
  • 同じ物件が複数件登録されているのは、販売元ではなく広告許可を得た不動産会社が掲載しているケースもあるから

2. 不動産ポータルサイトにはどのようなものがある?

不動産ポータルサイトは、一つではありません。不動産会社によって利用しているポータルサイトは異なるため、たとえばSUUMOに掲載されていても、HOME‘Sには掲載されていない物件もあると言います。

都市部は「SUUMO」が強い!?

高橋:都市部であれば、SUUMOを使っている不動産会社が多いと思います。SUUMOは不動産情報を提供するフリーペーパーなども発行していますが、大体が首都圏や地方主要都市に関するものですよね。

畑中:私も、都市部ではSUUMOが最も集客力が高い気がします。

全国の物件数が多い?「HOME’S」

高橋:全国の物件数で言えば、HOME’Sが一番多いように思います。

畑中:掲載費はSUUMOより安い印象がありますので、利用する不動産会社が多いのでしょう。

郊外エリアに強いのは「at home」?

畑中:at homeは「賃貸」というイメージがあるかもしれませんが、郊外は売買物件の掲載が多い感覚があります。

高橋:at homeは、昔から全国の不動会社に「マイソク」という図面資料を配っていたという歴史もあり、全国の中小規模の不動産会社との繋がりが深いんですよね。

地方独自のポータルサイトも

高橋:エリアによっては、地方独自の不動産ポータルサイトもありますよ。たとえば長野県だと、物件数が多いのは「ココスマ」ではないでしょうか。松本市の企業が運営している不動産ポータルサイトです。県内の宅建事業者の加盟率もNo. 1みたいです。

不動産ポータルサイトの種類
  • SUUMO:都市部に強い傾向
  • HOME’S:全国の物件数が多い印象
  • at home:郊外エリアの物件数が多い様子
  • 他、地方独自のポータルサイトもある

3. 不動産ポータルサイトを利用するメリット

不動産ポータルサイトは、不動産を販売・広告する手段のメインとなる媒体です。情報量が多く、購入を検討する人が自ら物件探しができる点は、不動産ポータルサイトの大きなメリットと言えるでしょう。

物件数が多い

高橋:少し前まで、新聞折込チラシや雑誌掲載などさまざまな広告手法がありましたが、今は購入を検討する人が自ら物件を探す時代です。そのため不動産会社も「広告=ポータルサイトに掲載すること」になってきています。常態的に新聞折込を実施しているのは、大手不動産会社や一部の有力な地域に密着した不動産会社です。

また、自社ホームページに物件を掲載している会社もありますが、SEO対策(検索エンジン最適化、検索エンジンで上位に表示されるよう対策すること)に力を入れていたり、SNSのフォロワーが多かったりしないと閲覧されないんですよね。となると、必然的に不動産ポータルサイトはメインの広告手段になってくるので、情報量が多い状態になります。

畑中:売主からご依頼をいただくとき、「ポータルサイトに掲載します」というのは、やはり強く売主の心に響く様子。弊社はどの物件もポータルサイトに掲載するわけではありませんが、一定数は掲載できるコマを持っておいて、必要なときには活用できるようにしています。

自分で物件探しができる

高橋:自宅にいながらでも、外出中でも物件探しができるという点で、不動産ポータルサイトを利用するメリットは大きいと思います。不動産会社のホームページだと、その会社が販売している物件しか見ることはできません。チラシなども同様です。一般の方が閲覧できる媒体の中では、情報の数ならポータルサイトが一番でしょう。

相場を把握できる

畑中:不動産ポータルサイトは、どんな物件が販売されているのかを一覧できることもメリットの一つです。たとえば、このエリアで、これくらいの築年帯の物件が欲しいと考えている人は、その条件で絞り込んでいけば、だいたいの相場が見えてきます。

不動産ポータルサイトを利用するメリット
  • 不動産会社のホームページやチラシなどと比べて物件数が多い
  • 自分で物件探しができる
  • 相場を把握できる

4. 不動産ポータルサイトを使うときのポイントと注意点

不動産ポータルサイトには、市場にあるすべての物件が掲載されているわけではありません。また、住まいの購入においては、物件選びだけでなく資金計画や住宅ローン選び、購入時の検査の実施や保険加入など、考慮すべきことはたくさんあるため、専門家の2人は「物件ありき」の購入にならないよう注意が必要だと言います。

すべての売り出し物件が掲載されているわけではない

高橋:売主の中には、非公開での売却を希望するなど、ポータルサイトへの掲載は控えたいと言う人もいます。また、掲載費は決して安くないので、不動産会社も、いくらでも、どんな物件でも載せられるわけではありません。会社ごとに掲載できる数の上限があるため、反響が得られやすい物件を優先的に載せることもあるでしょう。このため、複数のポータルサイトを見なければ見つけられない物件や、中にはどのポータルサイトにも掲載されていない物件があります。

畑中:先の通り、不動産会社によって利用しているポータルサイトは異なります。あるポータルサイトには掲載されているけど、別のポータルサイトには掲載されていないという物件もあるので、ポータルサイトだけではすべての売り出し物件を網羅することはできないんですよね。

物件ありきの購入にならないよう注意が必要

高橋:住まいの購入は、物件だけよければいいというものではないはずです。不動産ポータルサイトで独自に物件探しをすると「資金計画は大丈夫なのか」「その物件の構造や劣化状況などに問題はないか」「そもそも今買ってもいいのか」といったことを誰にも相談せず、物件ありきの購入になってしまうおそれがあります。

畑中:ポータルサイトを見るときは、物件情報だけでなく、不動産会社の情報も見るようにしていただきたいですね。各ポータルサイトには、不動産会社のページもありますし、各社の公式サイトを見に行くのもいいと思います。不動産会社のホームページを見れば、たとえばコンサルティングに力を入れているのか、資金の相談までできそうなのかなど、大方どんな会社かがわかるものです。

高橋:中古住宅を購入した人がリフォームをした割合は6割を超え、リノベーション済みの物件を購入した人でも購入前後に4割もの人がさらにリフォームをしているという統計があります。リフォームの実施時期は、購入時とは限りません。つまり、中古住宅を購入する人の中で「リフォームの相談をしたい」という人は多いはずですが、不動産会社はこのニーズに応え切れていないというのが現状だということです。

物件探しから入るのがダメというわけではありませんが、物件のよし悪しだけでなく、自分が聞きたいこと、不安に思っていることの答えを示してくれる不動産会社かどうかを見極める必要があるでしょう。

図表1:購入物件のリフォーム/リノベーション有無

リノベーション済みの中古住宅であっても、中古マンションでは4割以上、中古一戸建てでは5割以上の人が購入後にリフォームを実施している(画像出典:不動産流通経営協会「中古住宅購入時における住宅ローン利用等実体調査」)

必ずしも中立・公平に掲載されているとは限らない

高橋:GoogleやYahoo!などの検索エンジンもそうですが、ポータルサイトで上位表示されるには資金力も影響します。つまり、お金を出せば上位表示ができるようになっているなど、すべての物件が完全に中立・公平に掲載されているわけではないということです。ポータルサイトも今、掲載費がどんどん上がっていると言われています。

畑中:弊社でもポータルサイトでの掲載は、あまり上位表示されないですね……。

高橋:そういう意味では、自分に適した不動産会社に出会える確率は下がっている可能性がありますよね。ポータルサイトで上位表示される会社は資金力のある会社、広告費用をかけている会社ということで、安心して任せられる会社かどうかは別途判断が必要でしょう。

不動産ポータルサイトを使うときのポイントと注意点
  • すべての物件が掲載されているわけではない
  • 物件ありきの購入にならないよう注意が必要
  • 必ずしも中立・公平に掲載されているとは限らない

5. 不動産ポータルサイトでの物件探しのポイントとは?

不動産ポータルサイトで数多くの物件情報を見ることで相場の把握や比較ができる一方、「不動産会社選び」や「不動産の買い方」に目が向きにくくなってしまう点には注意が必要です。専門家の2人によれば、物件選びのためだけに不動産ポータルサイトを使うのではなく「不動産会社と出会う場」としての活用がおすすめなのだとか。

中古住宅は「物件ありき」ではなく「不動産会社ありき」のほうが合理的

高橋:ここまでお話ししてきたように、ポータルサイトごとに掲載物件は異なり、掲載されていない物件もあります。レインズを見れば物件情報量はどの不動産会社も同じはずなので、ポータルサイトで物件探しをするのではなく、不動産会社に相談してしまったほうが早いし、情報の漏れがないと思います。

畑中:弊社は親子間売買や任意売却、相続対策などをコンサルティングしている会社なので、不動産ポータルサイトに物件情報を掲載しないことも少なくありません。たとえば「相続対策をしたい」「中古住宅を買ってリフォームをしたい」「不具合や劣化状況が気になる」という場合は特に、物件からではなく、不動産会社から探すといいかもしれませんね。

高橋:ポータルサイトに載っている中古物件を扱っている会社で、リノベーションの相談までできる業者はほとんどありませんからね。弊社で言えば、ポータルサイトよりも「さがつく」という自社サイトのほうが問い合わせ数は多いです。中古住宅は、新築住宅以上に買い方に多様な選択肢があります。リノベーションしたり、検査(インスペクション)したり、かし(瑕疵)保険をつけたり、安心で快適な住まいを見つけるためにすべきことがたくさんあります。物件から入ってしまうと、このようなニーズに応えられる不動産会社にあたらないこともあるでしょう。

ただ「さがつく」の利用者もポータルサイトは必ず見ているので、ポータルサイトは物件探しの登竜門というか、導入的な役割は果たしているものと考えられます。

・さがつく:https://sagatsuku.com/

不動産ポータルサイトは住まい探しのツールの一つ

高橋:飲食店でも旅行でも、今はさまざまな探し方がありますよね。不動産も、ポータルサイトだけでなく、SNSやGoogleなどの検索エンジンも駆使するべきでしょう。ポータルサイトを、カタログやパンフレットのような位置付けにするのもいいのではないでしょうか。ポータルサイトを見て相場観を養ったうえで、不動産会社に相談するのもいいと思いますよ。

畑中:ポータルサイトは物件を探す場所、場合によっては物件を買う場所と捉えている人が多いかもしれませんが、むしろ「不動産会社と出会う場所」と位置付ければいいのではないでしょうか。

まずは自分たちの希望や理想を明確にする

畑中:予算や希望のエリア、物件種別などによっても適した不動産会社は異なります。まずは自分自身や家族の住まいに対する希望や理想を明確にし、それが可能なのか、可能にするにはどうしたらいいかを考えるときには、専門家の意見が役に立つはずです。

物件探しのポイント
  • 合理的な住まいの購入をしたいなら物件選びの前に不動産会社を選ぶことが大切
  • ポータルサイトは物件と出会う場所ではなく不動産会社と出会う場所と考える
  • まずは自分たちの希望や理想を明確にする

6. 不動産ポータルサイトは一つの「出会いの場」と考え、上手に活用しよう

不動産ポータルサイトを活用することで、自宅にいながらでも外出中でも、複数の物件を閲覧したり、比較したりすることができます。ポータルサイトから不動産会社に問い合わせることも可能ですが、資金計画や住宅ローン選び、不動産の買い方に悩みや迷いがある場合は、物件探しの前に信頼できる不動産会社を見つけ、相談することも選択肢の一つになってくるのではないでしょうか。

不動産ポータルサイトは、不動産会社選びにも利用することができます。物件とマッチングする場としてだけでなく、不動産会社との出会いの場としても不動産ポータルサイトを活用してみましょう。

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高橋正典 (たかはし まさのり)
不動産コンサルタント、価値住宅(株) 代表取締役。金融機関勤務を経て、都内不動産デベロッパー立ち上げ期に参画し、同社取締役及び関連会社の代表取締役を歴任。エージェント(代理人)型の不動産会社として、2008年に(株)バイヤーズスタイルを設立、代表取締役就任。2016年10月に会社名を価値住宅(株)へ変更。中古住宅(建物)を正しく評価し流通させる取組みを全国へ拡げるため、VCネットワーク「売却の窓口®」を運営し、その加盟店は全国へ広がっている。不動産流通の現場を最も知る不動産コンサルタントとして、各種メディア・媒体等においての寄稿やコラム等多数。
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畑中 学 (はたなか おさむ)
1974年生まれ。不動産コンサルタント。武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。幼少時に相続問題に巻き込まれ自宅を失ったことで、不動産に強い関心を持つ。大学院を修了後、設計事務所に就職、その後大手不動産会社に転職し7年勤務。不動産の販売・企画・仲介業務に携わり、当時最年少の32歳で支店長となる。リーマン・ショック後の2008年に創業し代表取締役に就任。年間300件前後の相談を受け、不動産の売買のサポートは累計800組以上。特に不動産に関わる相続や債務問題のトラブルシューティングを得意とし、解決率は96%。その真摯な取り組みがNHK総合テレビ「おはよう日本」をはじめ、読売新聞、日本経済新聞などで紹介されている。不動産業界・建設業界の人材育成にも尽力しており、各業界団体や日本経済新聞社でのセミナーにも登壇している。また、不動産ポータルサイトで総合アドバイザーを勤めている。宅地建物取引士のほか、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者の資格も保有している。著書に、8万部超のベストセラーとなった『〈2時間で丸わかり〉不動産の基本を学ぶ』『家を売る人買う人の手続きが分かる本』『不動産の落とし穴にハマるな!』(かんき出版)、『図解即戦力 不動産業界しくみとビジネスがしっかりわかる教科書』(技術評論社)など多数。