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中古マンションを購入してリノベーションしたい!物件や改修内容を決めるときのポイントとは

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石井 健

新築住宅の高騰やリノベーションの普及などにより、中古マンションをリフォーム・リノベーションして住む人が増えています。リノベーションは空間やデザイン変更の自由度が高いように思えますが、実はマンションによっては自分が望むリノベーションができない場合があります。また、予算に応じて実施する工事内容や範囲を絞らなければならないケースもあるでしょう。

本記事では、ブルースタジオの石井健が、「中古マンション購入+リノベーション」における物件選びの注意点やリノベーション内容を決めるときのポイントを解説します。

1. 中古マンションの購入時に懸念されるリスクは?

きれいにリノベーションするとしても、中古マンションはあくまで中古です。リノベーションを前提としている場合は、築20年や30年など一定の築年数の物件を購入するケースが多いと思います。まずは、新築マンションや築浅のマンションにはない中古マンション特有のリスクを知っておきましょう。

多くの場合、個人間売買となるため、契約不適合責任の期間に注意

新築住宅は不動産会社(宅建事業者)が売主となりますが、中古マンションの売主は多くの場合、個人です。個人が売主の場合、「契約不適合責任」の期間が3ヶ月などに短縮されていることがまず一つ目のリスクとなります。

契約不適合責任とは、契約後に「契約に適合していない不具合や不備」について売主が負う責任です。しかし、契約不適合責任は任意規定のため、責任を負う期間が限定的だったり、免責となったりすることもあります。

共用部の管理不足による、住み心地や資産価値の低下

中古住宅であるということは、建物や配管などが一定程度、劣化していることが予想されます。劣化はどのマンションでも起こり得るとしても、維持、管理、メンテナンスの状況についてはマンションによって大きく異なります。

マンションは、複数の人が共同で管理していく建物です。マンションを購入すれば、自身も管理組合の一員となります。住人が管理費や修繕費を負担し、どこをどう維持していくかの方向性を決めていくわけですが、多くのマンションが債務超過の状態です。

図1:修繕積立金の積立状況

2018年度(平成30年度)マンション総合調査によれば「現在の修繕積立金残高が計画に比べて余剰がある」と回答したマンションはわずか33.8%にとどまる(画像出典:国土交通省「マンションを取り巻く現状について」)

とはいえ、修繕積立金が不足していたり、借り入れをしていたりすることが、すなわちNGということではありません。企業でも個人でも、借り入れをしているからといって経営状態・経済状況が悪いわけではないのと同じです。大規模修繕時の借り入れには、金利優遇もあります。適切な時期に、適切な修繕を実施していて、返済計画がしっかりしていれば大きな問題ではありません。

大切なのは、状況を把握することです。不動産会社の担当者は、売買契約をサポートすることだけが仕事ではありません。マンションの管理状況が客観的に見て良好なのか、懸念点はあるのか、ぜひ聞いてみてください。これらの質問に答えられないようであれば、仲介会社や担当者の変更も視野に入れるべきだと思います。最近では建物だけではなく、マンションの管理状態を検査(インスペクション)してくれる専門機関もありますので、気になる人はこのようなサービスの利用も検討してみるといいでしょう。

専有部(区分所有部分)の劣化・損傷によるトラブルも

専有部(区分所有部分)については、管理組合の維持・管理の範疇を出るため、売主に修繕歴やこれまでに出た不具合などを聞くしかありません。とはいえ、劣化・損傷が生じた箇所によっては、管理組合に修繕を負担してもらうことができたり、火災保険の対象となっていたりすることもあります。雨漏り跡などが見られれば、専有部だけでなく共用部にも劣化・損傷が見られる可能性があるため、専有部の劣化・損傷と修繕履歴もよく確認しておきたいところです。

中古マンションの購入時に懸念されるリスク
  • 多くの場合、個人間売買になるため契約不適合責任期間が短い
  • 共用部の管理不足による、住み心地や資産価値の低下
  • 専有部(区分所有部分)の劣化・損傷によるトラブル

2. どんなリフォームをしたい?するべき?プロの視点から紹介

リノベーションを検討している人は「格好よくしたい」「スタイリッシュな住まいにしたい」など、さまざまな理想や希望があるでしょう。もちろん見た目も大切ですが、優先すべきなのは「暮らしが豊かになるリノベーションかどうか」だと思います。

まずは、物件購入費用+リノベ費用に無理がないかを確認

中古住宅のリフォーム・リノベーションというと、壁紙や設備を一新したいなど「見た目」や「デザイン」に意識が向きがちです。しかし、まず考えなければならないのは、中古マンションの購入費用に、安心・安全に住むためのリノベーション費用を加えた金額に無理がないかということでしょう。つまり、購入前にリノベーションにいくらかかるか見積もりを取らなければなりません。

中古マンションを購入した後にプランを決めていくと、希望のリノベーションができなくなってしまうこともあります。「こんなはずじゃなかった」とならないためにも、購入前にリノベーション費用を見積もり、中古マンションの購入費用とリノベーション費用の総額で購入できるかどうかを判断するようにしましょう。

家事動線・生活動線をよくする

マンションの専有部の内壁は構造上、比較的自由に動かせることが多いです。規約や配管の場所などによって制限されることもありますが、物件によっては大規模な改修もできるので、暮らしの「動線」を意識して、次のようなことを考えてみるのもおすすめです。

  • 家事がしやすい動線
  • 散らかりにくい収納
  • 家族のコミュニケーションが取りやすい間取り

ただ、家事動線・生活動線まで考えてリノベーションプランを考えるのは容易ではありません。考えることはできても、物件の持つポテンシャルを活かしきれないということもあると思います。そのため、比較的大きなリノベーションを検討するときには、必ずプロに相談すべきでしょう。

「必要な改修」を見極める

中古マンションは、建築時期によって間取りや配線、配管などが大きく異なります。たとえば、70年代、80年代に建築されたマンションはリビングが真ん中にあったり、廊下側の居室に空調設備をつけられなかったりする物件もあります。この築年数の物件は今のライフスタイルと合っておらず、スケルトンリフォームを希望されるケースも多いです。スケルトンリフォームとは、内装や設備をすべて解体し、間取りも一新させるリフォームを指します。

改修歴がなければ配管も変えたほうがいいのですが、60年代、70年代のマンションは下の階の部屋の天井裏に配管が通っていることもあります。この場合、自分の意思で配管を交換することはできません。ただ、下の階にリフォーム歴があれば、管理組合の負担ですでにリフォームされている可能性もあります。配管をリフォームできるのかできないのか、すでにリフォーム済みなのかリフォームの計画があるのかマンションによって異なりますので確認する必要があります。

一方で、2000年前後に建てられたマンションであれば、今のマンションと大きく間取り構成や基本性能が変わるわけではありません。この築年帯であれば、合理的なアプローチは「なるべく壊さない」ことになるでしょう。スケルトンリフォームに夢を抱いている人も少なくありませんが、そのまま壁紙や設備を入れ替えれば、住める物件も実は多いのです。

自分がやりたいリフォーム、理想のリノベーションもあるでしょうが、建築時期やマンションの構造、改修歴などから「必要な改修」を見極めることが大切です。

どんなリフォームをするべき?
  • 費用に無理がない
  • 自分たちに合った家事動線・生活動線にする
  • 希望や理想だけでなく「必要な改修」を見極めて実施する

3. 中古マンションを選ぶときのポイント

リノベーションを前提としていたとしても、物件選びは非常に重要です。それは物件によってできるリノベーション・できないリノベーションがあり、リノベーションでは解決できないこともあるからです。

やりたいリノベーションができるのかを確認する

一般の人が「できるリノベーションやできないリノベーション」「必要なリノベーション」を判断することは難しいので、できれば物件探しの段階で建物のことがわかる専門家に入ってもらうのが理想的だと思います。建物のことがわかる人というのは、リノベーション会社やインスペクターを指します。インスペクターとは「インスペクション」という建物の検査ができる建築士のことです。

ただ、リノベーション会社にしてもインスペクターにしても、主に戸建てを専門としていることもあります。マンションの改修は、マンションならではの構造や設備、管理規約などが大きく影響します。管理規約で床の材質が決められていたり、水周りが動かせなくなっていたり、電気容量を増やせなかったりすることもあるからです。リノベーション会社やインスペクターに依頼する際には、事前にマンションのリノベーション実績などを確認することが大切になってくるでしょう。

リノベーションでは変えられない点を重視して物件を選ぶ

専有部の内装は比較的自由に変えることができますが、立地や眺望、共用部などは変えることができません。これらとともに、マンションに住んでいる人の雰囲気やエントランスに入ったときの雰囲気などに対する「直感」も重視するとよいと思います。どんなにマンションに詳しい専門家であっても、買主の好みまで完全に把握することはできません。

マンションを購入する前には必ず内覧をすると思いますが、内覧となると、つい専有部に目が行きがちです。もちろん専有部を見ることも大切なのですが、そこから見える景色、専有部に行くまでのエレベーター、共用廊下などにも目を向けてみてください。ゴミ捨て場や掲示板なども、マンションの個性や暮らしている人の傾向が出るところです。駐車場や駐輪場を見れば、暮らす人の家族構成やライフスタイルもある程度見えてきます。

資産価値が維持できるかどうかもチェック

マンションの管理状態は、居住快適性に影響するだけではなく、今後の資産価値にも直結します。これまで適切な時期に適切な修繕がなされていなかったり、修繕計画が立てられていなかったりすれば、永く安心して住むことができないかもしれません。

また、中古マンションの中には、駐車場など敷地の一部を売却して「既存不適格(既に建っている建物が法令などの改正によって新しい規定に適合しなくなること)」となった物件も見られます。このような物件は住宅ローンの審査が通りにくいため、購入時に困るだけではなく、将来的に売却しにくくなったりする可能性もあります。

中古マンションを選ぶときのポイント
  • やりたいリノベーションができるのかを確認する
  • リノベーションでは変えられない点を重視して物件を選ぶ
  • 資産価値が維持できるかどうかもチェック

4. リノベーション済みマンションのメリット・デメリット

リノベーションした中古マンションに住むには、2つの選択肢があります。1つはここまでお話ししてきたように中古マンションを購入して、自らリノベーションするという方法。そしてもう1つが、すでにリノベーションされている中古住宅を購入するという方法です。リノベーション済みマンションのメリット・デメリットをまとめると、次の通りです。

メリット

リノベーション済みのマンションが自分たちのライフスタイルに適合していれば、メリットは大きいと思います。まず、購入後にすぐ住めるというのは大きなメリットと言えるでしょう。中古マンションを買って、自らリノベーションするとなると、リノベーションを開始できるのは引渡しを受けたあとです。大掛かりなリノベーションとなれば引渡しから数ヶ月は住めないということになりますが、リノベーション済み物件ならすぐに入居できます。

改修後の状態を見て購入できるという点もメリットになり得ますが、同時にデメリットになることもあります。

デメリット

自分たちのライフスタイルに適合していれば、リノベーション済み物件はメリットが大きいと述べましたが、そもそも「自分たちに合っている」という判断が正しいかどうかをよく考えたほうがいいと思います。リノベーション済みマンションは、よくも悪くも目の前にある状態のまま購入しますが「実際に暮らし始めてみたら収納が足りなかった」「動線が悪かった」「暮らしにくい」といったことが出てくる可能性もあります。

リノベーションプランを検討したり、1から間取りを設計したりする過程が、自分たちの暮らしや将来を見つめ直すきっかけとなることも少なくありません。プランを検討している中で、潜在的なニーズに気づくこともあります。

自らリノベーションする場合も、リノベーション済みマンションを購入する場合も、まずは自分たちがどんな暮らしをしたいのか、どんなゴールを目指したいのか、よく考えることが大切です。

リノベーション済みマンションのメリット・デメリット
  • 改修後を実際に見て購入の判断ができ、購入後すぐに入居できる点がメリット
  • 自らリノベーションする場合と比べると、暮らし始めてから不都合が出てくる可能性も

5. 「中古マンション購入+リノベーション」は何から始めればいいの?

リノベーション前提で中古マンションを購入する際に、物件選び、リノベーションプランの検討、リノベーション業者選び、不動産会社選び……何から始めればいいかわからないという人は、かけられる予算とその振り分けから検討してみましょう。

まず初めにかける予算と振り分けを決める

同じ年収であっても、住宅にかけられる予算、かけたい予算は人によって異なります。趣味にお金をかけたい人、教育にお金をかけたい人、これらにお金をかけずに住まいにお金をかけたい人、千差万別です。また、同じ予算であっても、予算の振り分け方によって物件選びやリノベーションプランも変わってきます。

同じ5,000万円の予算でも、リノベーションに500万円以上かけたくない人もいれば、2,000万円かけたい人もいるはずです。物件の取得にお金をかければ、いい立地、広い家、築浅物件などが手に入りやすいですが、リノベーションにお金をかければ、最新の設備や好みのデザインが取り入れやすくなります。

住みたい場所から決めていくと、どうしてもお金がハードルとなって、物件選びやリノベーションのプランニングが進まなくなってしまうものです。ただ、予算から住める物件やリノベーション内容を決めるのは、少々楽しみには欠ける方法かもしれませんので、この方法は検討が堂々巡りして家探しがなかなか進まない人におすすめの方法になります。

“知識武装”のやりすぎには要注意

中古マンションやリノベーションについて一定の知識をつけることは大切ですが、マンションの資産価値や管理、構造、リノベーションのことまで調べつくし、知識武装しすぎるのは要注意です。と言うのも、知識ばかりをつけてしまうと、何か特定のことを大袈裟に捉えてしまったり、身動きが取れなくなる可能性があるからです。

知識には、バランスも必要です。たとえば、初めて子どもを産んだ人は、あれもこれも不安になると思いますが、学んだことすべてを気にしていたら子育てなどできません。子育てを経験した両親から「そんなに気にしなくても大丈夫だよ」と言ってもらうと安心するように、大切なことの優先度や強弱をプロに助言してもらうことで安心するものです。

どんなに自分がマンションやリノベーションに詳しくなったとしても、物件の状況や自分たちの希望に応じた適切な判断をするためにも、プロに客観的かつ専門的なアドバイスをしてもらい、チューニングしてもらうことは不可欠だと言えるでしょう。

プロを活用しつつ、自分の「直感」も大切に

物件選びでは「直感」も大切にすべきだと前述しましたが、不動産仲介会社やリノベーション会社、インスペクターを選ぶときにも「合う・合わない」「好き・嫌い」の直感を大切にしてみてください。大切なのは、専門的な部分は専門家に任せ、自分たちが物件選びやリノベーションプランの検討に集中できる関係が作れるかどうかです。

「中古マンション購入+リノベーション」は何から始める?
  • 予算と予算の振り分けを決める
  • 知識武装のしすぎは要注意
  • プロを活用しつつ、自分の「直感」も大切に

6. リノベーションに必要なポイントを押さえ、「こんな風に暮らしたい」を実現しよう

リノベーションは、自分たちの暮らしをよくするためのものです。自分たちの理想の暮らしを実現するには、中古マンションを購入する前に信頼できる専門家とともに建物の状態の確認や必要なリノベーション、必要な予算を把握し、検討していくことが大切です。これらのポイントを押さえて、満足のいく中古マンションの購入+リノベーションを実現してほしいと思います。

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石井 健 (いしい たけし)
(株)ブルースタジオ 執行役員 クリエイティブディレクター。 1969年生まれ。日本のリノベーション・シーンの創成期から手がけてきた「ブルースタジオ」クリエイティブディレクター・執行役員。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)を始めグッドデザイン賞7度受賞。「FURNITURE半身浴」を始めリノベーションオブザイヤー9度受賞。著書『LIFE in TOKYO』(エクスナレッジ)は日本・中国・韓国・台湾の4ヶ国語で発行。朝日新聞社が運営するウェブマガジン『&w』(朝日新聞デジタル)のコンテンツ「リノベーション・スタイル」10年連載中。2022年12月よりリノベーション協議会「エグゼクティブ・アドバイザー」に就任など、多岐にわたり活躍中。