買うコツ

分譲マンションにおける地域コミュニティへの関わり方は?「管理組合」と「自治会」の違いは?

分譲マンションには、建物の維持管理や住民同士のコミュニティ形成を図るため「管理組合」や「自治会」などの組織があります。けれども「管理組合」や「自治会」の違いがよくわからないまま、「管理費」「修繕積立金」や「自治会費」などを支払うように求められ、加入に疑問を抱く人も少なくないようです。

ここでは「管理組合」と「自治会」の違いを中心に、その目的や位置付けについて解説し、「なぜ加入するのか?」「いずれも加入すべきか?」の疑問に答えます。

1.  管理組合とは

管理組合とは、分譲マンションの購入者(区分所有者)全員で構成する、マンションを維持・管理する目的の組織です。区分所有法で設立が定められており、区分所有者全員が必ず加入しなければなりません。つまり、分譲マンションを購入すると、管理組合の構成員として自ずと管理組合員となります。

マンションは一棟の建物を区分して所有していますが、それぞれの区分所有者が区分所有権を持っている各室(専有部分)以外の、エントランスから各戸へ通じる共用廊下や通路などは区分所有者全員が使用する共用部分とされます。この共用部分を中心としてマンションという共有の財産を住民全員で管理するための組織が管理組合です。

管理組合とは
  • ・分譲マンションの購入者(区分所有者)全員で構成する、マンションを維持・管理する目的の組織
  • ・区分所有法で設立が定められており、区分所有者全員が必ず加入しなければならない
  • ・共用部分を中心として、共有財産であるマンションを住民全員で管理する

2. 自治会とは

自治会とは、町村内の一定区域に居住する住民たちによる、地縁に基づいて形成される団体のことです。町内会も同じ意味で、2018年(平成30年)の総務省の調べによれば、全国には30万弱の自治会・町内会が存在しています。

自治会とは
  • ・町村内の一定区域に居住する住民たちによって地縁に基づいて形成される団体
  • ・全国には30万弱の自治会・町内会が存在している

3. マンションの管理組合と自治会の違い

自治会の目的は地域の住民同士の親睦を図り、地域生活の向上を目指すことにあります。他方、マンションの管理組合はどうでしょう。管理組合は区分所有者で構成された団体で、その目的は建物とその敷地、附属施設を維持管理することです。

さらに言えば、自治会は基本的に地域コミュニティから生まれた任意団体です。対して、管理組合はマンションという共有財産を管理する管理団体です。管理組合には業務内容、構成員、入会条件についてもはっきりとした規定があり、区分所有者であれば自動的(強制的)に加入するものです。

一方、自治会への加入や脱退は自由で、参加を強制することはできません。実はそもそも自治会を作ること自体も法的に決められているわけではありません。というわけで、両者は目的も性格もまったく異なる団体です。

マンションの管理組合と自治会の違い
  • ・管理組合は建物、敷地、附属施設を維持管理することが目的で加入は必須
  • ・自治会は地域住民同士の親睦を図り、地域生活の向上を目指すことが目的で、加入は任意
  • ・管理組合と自治会は目的も性格もまったく異なる団体である

4. 「コミュニティ条項」が削除されたワケ

国土交通省が公表している「マンション標準管理規約」では、2004年の改正時から、いわゆる「コミュニティ条項」が記載されていました。しかし、このコミュニティ条項はその後、2016年度の「マンション標準管理規約」において削除されました。

コミュニティ条項とは何でしょうか。かいつまんで説明するとその骨子は、(1)居住者間のコミュニティ形成は、日常的トラブルの未然防止、大規模修繕工事等の円滑な実施などに役立つので、管理組合にとって必要な業務であり、(2)管理組合が居住者間のコミュニティ形成のために実施する催事の開催費用や、管理組合役員が地域の町内会に出席する際に支出する経費など、地域コミュニティにも配慮した管理組合活動にかかるお金は管理費からの支出が認められるというものでした。

ではなぜこの条項を削除したのか、その点について国土交通省は、2016年度「マンション標準管理規約(単棟型)」の「コメント」で解説しています。
こちらも簡単に紹介すると、(1)管理組合の業務として「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成(に要する費用)」を掲げていたが、これはマンションの管理という管理組合の目的の範囲内で行われることを前提にしたものだった、(2)しかし、「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」との表現には、定義のあいまいさから拡大解釈される懸念がある、(3)とりわけ自治会費を管理費として一体で徴収し自治会費を払っている事例、自治会的な活動への管理費の支出をめぐる意見対立やトラブルが生じている実態もあった、と述べられています。これらが当該条項を削除するに至った経緯です。

「コミュニティ条項」について
  • ・2016年度の「マンション標準管理規約」において削除された
  • ・削除の背景には、管理業務の一つとして掲げられた「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」の定義があいまいで、トラブルにつながるという実態があった

5. 管理組合や自治会にはどう関わるといい?

管理組合と自治会の関わり方

これまで紹介してきた経緯の通り、要は、管理組合と自治会の活動を安易に混同することは望ましくないということです。管理組合がマンション内でコミュニティ形成に関わる活動をすることはあり得ます。

しかし、強制加入である管理組合で行う活動と、自由意思で入る自治会での活動の区別があいまいになると、自治会の催しに参加した費用を管理費でまかなうケースなどが出てくるおそれがあります。自治会の集まりへの参加は義務だと勘違いする居住者も現れるかもしれません。管理組合に支払うべき管理費と同時に自治会費を支払うやり方が確立してしまうのは大いに問題があります。以上から、自治会費は強制的に支払わされるべきものではありませんから、これら課題の整理をする必要があるのです。

管理組合と自治会とは明確な役割分担をすることが重要です。特に管理費と自治会費とは、異なるものとして厳密に区別しなければなりません。

管理組合や自治会には加入すべき?

先に紹介した通り、管理組合への加入は区分所有法で定められているため、必ず加入しなければなりません。特に中古マンションを購入した場合、管理組合の役員などは既に決まっている状態で途中から加入することになるので、つい「既にあるもの」として他人事のように感じてしまうかもしれません。

しかし、管理組合はマンションでの暮らしをより快適にし、保有資産としての価値を維持・向上していくために必要不可欠なものです。管理組合の活動に積極的に、主体的に取り組むことによって住む人同士が共同の居場所を大切に使用する気持ちが芽生えます。また、活動を通してお互いの生活や家族への相互理解にもつながり、トラブルを未然に防ぐ効果もあります。

自治会への加入は、世帯ごとの判断に委ねられます。地域のコミュニティを大切にしたいと考える人や、地域のイベントなどを通じて住民とのつながりをより深めたい人は、加入することによって暮らしをより豊かにできることでしょう。また、地域とのつながりを深めておくことは、小さな子どもや高齢者がいるなど、見守りが欠かせない人や家庭にとっても安心につながるでしょう。

管理組合と自治会の関わり方
  • ・目的や性格が異なる管理組合と自治会の活動を安易に混同することは望ましくない
  • ・管理組合と自治会とは明確な役割分担をすることが重要
  • ・特に管理費と自治会費は、異なるものとして厳密に区別する必要がある
  • ・資産価値の向上やマンション暮らしをより快適にするためにも、管理組合には積極的・主体的に関わりたい
  • ・自治会への加入は必須ではないが、参加することで暮らしをより豊かにできる可能性がある

6. 分譲マンションを購入する際、「管理組合」は自分ごととして関わる意識を

マンションを購入する人にとって加入が必須なのは管理組合ですが、管理組合に入っていれば自治会には加入しなくていいということではありません。地域の中で暮らす以上は、誰もが地域のコミュニティに参加し、住みやすい環境づくりに一役買うことが可能です。管理組合と自治会、両者の目的や性格の違いをしっかりと把握しながら、それぞれの活動を「自分ごと」として積極的・主体的に関わる意識を持つことで、よりよい暮らしにつながることでしょう。

参考文献:

  • 総務省「自治会・町内会等とは」
  • 公益財団法人マンション管理センター「よくある相談Q&A - 管理組合と自治会の違い」
  • 一般社団法人日本マンション学会「コミュニティの意義に関するマンション学会の多数意見」
  • 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」
  • 京都市「京都市情報館 – 管理組合と自治会活動」

※掲載内容は2023年8月時点の情報です。