買うコツ

不動産会社が販売するリフォーム・リノベーション済み中古住宅「買取再販住宅」ってどうなの?そのメリットは?

樽 宏彰

住まいを購入するときの選択肢の一つとして不動産会社(宅地建物取引業者)が中古住宅を買い取り、リフォーム・リノベーションをした上で販売をする中古住宅(買取再販住宅)が近年都市部を中心に広がりつつあります。購入時点でリフォーム・リノベーションが完了していることから、中古住宅でありながら自ら手を加える必要がなく、そのまま住むことができ、価格も新築に比べれば手が届きやすいため、昨今注目されています。

本記事では、リフォーム済み中古住宅の仕組みやメリット・デメリット、注意点などについて、(一社)リノベーション協議会 事務局長の樽 宏彰(たる ひろあき)が解説します。

1. 「買取再販住宅」とは?どんな仕組みなの?

まずは、買取再販住宅の概要や仕組みを解説します。

宅地建物取引業者が買い取り再販する物件

買取再販住宅とは、宅地建物取引業者が買い取った物件をリフォーム・リノベーションした上で販売(再販)する住宅です。買取再販住宅は、買主からすればリフォーム・リノベーション済みの中古住宅となります。国土交通省によると、不動産取引についてさまざまなノウハウを有する宅地建物取引業者が、既存住宅を取得し、効率的・効果的にリフォームを行った後に販売する事業形態と定義しています。

買取再販住宅はリフォーム・リノベーション済み

リフォームとリノベーションの明確な違いは曖昧ですが、一般的には工事の規模や内容で区分されます。設備の入れ替えや壁紙、床の張り替えなど、建築物を新築当時に近い状態に戻すための部分的な対処を主にリフォームと呼んでいます。一方、リノベーションは、原状回復のための部分的な対処だけでなく、ライフスタイルに合わせて間取りの刷新や生活するための機能や性能面の向上など、快適な暮らしを実現するために包括的な改修を行い、現代的な住まいに再生するものを言います。

買取再販住宅のリフォーム・リノベーションの範囲は、物件の築年数や条件によります。築浅の物件であれば部分的にリフォームしたうえで再販されることもありますし、築30年、40年ともなればスケルトン状態にした上でリノベーションし(フルリノベーションと言います)、販売される物件が多いです。

買取再販住宅とは?
  • ・宅地建物取引業者が買い取った中古住宅をリフォーム・リノベーションした上で再販する住宅
  • ・リフォーム・リノベーションの範囲は住宅の築年数や状況による

2. リフォーム・リノベーション済み中古住宅(買取再販住宅)のメリット・デメリットは?

買取再販住宅は、新築後、年数を経過した物件であっても綺麗な状態ですぐに入居できるほか、税制優遇を受けられるなど、メリットが多数あります。一方、すでに完成済みのため、配管設備や断熱、構造部位など「見えない部分」の状態が分かりにくい点は、購入検討時に注意し、よく確認することが必要でしょう。

メリット

買取再販住宅のメリットは、まず新築物件と比較して安価に購入できることにあります。もちろん、築年数の分だけ躯体は年数を重ねていますが、設備や建具、仕様が刷新され、さらに現代的なライフスタイルに合わせて間取りの変更や、給排水設備なども刷新、性能面の向上がなされているリノベーション物件もあります。

さらに、新築物件と同様の控除期間・控除上限額で住宅ローン減税が受けられます。自ら中古住宅を取得してリフォームやリノベーションする場合は、その住宅ローンの手続きなども煩雑です。買取再販住宅は、新築同様の金利や返済期間の条件でローンを借り入れることも近年できるようになりました。

また、自ら中古住宅を取得してリフォームやリノベーションする場合は、入居できるまでに一定の期間を要しますが、買取再販住宅なら購入後、すぐに入居できます。売主の契約不適合責任の責任期間も、個人間売買と比べると明確です。一般の個人が売主の中古住宅は契約不適合責任が免責となったり、期間が短く設定されたりするケースも少なくありませんが、宅地建物取引業者が売主の物件は、売主が2年以上、契約不適合責任を負わなければならないと法律で定められています。

契約不適合責任とは、不動産の売主が負う「契約内容に適合していない部分に対する責任」です。契約内容に適合していない不具合が発覚した場合、買主は追完請求(修補・代替物の請求)や代金減額請求などができます。

また、売主によっては予めかし(瑕疵)保険に加入している物件もあります。売主が倒産してしまうなど、万が一の時も、より安心した保証となるため、加入の有無について確認するとよいでしょう。

デメリット

一方、買取再販住宅は、自分の好みに合わせたり、必要な箇所だけリフォーム・リノベーションしたい人にとっては希望に沿わない物件もあるかもしれません。たとえば、「あえて昔の内装デザインを残したい」「水周りだけ綺麗であればいい」と考える場合、求めていない改修工事が施されていて、無駄になり、またさらに作り直すことを考えると、より割高に感じることもあるでしょう。

ただ、買取再販事業者は多くのリフォーム・リノベーションを手がけており、一括発注ができるため、一般の人がリフォーム工事を発注する場合と比較すると、リフォーム費用を安く抑えられる傾向にあります。そのため、中古住宅を購入し、自ら同等のリフォーム・リノベーションをするよりは安く取得できるでしょう。

また、見た目だけではなく、重要なのは、配管設備や断熱、構造部位などの「見えない部分」がどうなっているか、刷新されているか、既存利用でも検査されて保証されるのかなどは事業主や物件により異なります。物件選びに際しては、表層だけの綺麗さに惑わされることなく、見えない所の状況や修繕履歴、その保証についての確認も怠らないことが大切です。

買取再販住宅のメリット・デメリット
  • <メリット> ・新築よりも手が届きやすい価格で購入できる
  • ・すぐに入居できる
  • ・築年数の割には綺麗な状態で住み始められる
  • ・個人間売買に比べて契約不適合の責任期間も明確
  • ・2年以上の保証がある
  • ・住宅ローン減税などで優遇される
  • <デメリット> ・一から自分好みに作りたい人にとっては、希望に沿わない場合がある
  • ・物件によって、配管設備や断熱、構造部位などの見えない部分が刷新されていない場合もあるため確認が必要
  • ・リフォーム・リノベーション内容が自身に不要なものがあれば、その分、割高に感じる場合がある

3. リフォーム・リノベーション済み中古住宅(買取再販住宅)は増えている?現状と今後の見通し

住まいを探す人の多くが、宅地建物取引業者が売主で「リフォーム済み」「リノベーション済み」と表記されている物件を目にしたことがあると思います。買取再販住宅は近年、増加傾向にあり、今後も増えていく見通しです。

買取再販住宅は増加傾向にある

リフォーム・リノベーション済みの中古住宅は、増加傾向にあります。(一社)リノベーション協議会が定める優良なリフォーム・リノベーションの品質基準を満たす「適合リノベーション住宅(適合R住宅)」の年間発行件数はここ数年、5,000件以上にのぼり、2022年には累計6万8,000戸を超えました。首都圏では、成約した中古マンションの11.64%(2022年実績)をこの適合R住宅が占めています。

「適合R住宅」とは、買取再販事業者が取得した物件を、その基準に則り、給排水管・電気配線など住まいの基本性能(重要インフラ)の見えない箇所も確認、検査をしたうえで必要な改修工事を施し、その内容を報告書として発行、この目に見えない重要インフラに対して最低2年間の保証をします。そして、その記録を住宅履歴情報として保管します。これによって、点検やメンテナンスがしやすく、将来売却する際にも役立つ仕組みです。国もこの買取再販の仕組みはストック活用の観点から重要視しており、税制優遇など政策の後押しもあるため、今後も数は増えていくと見込んでいます。

図表1:「適合リノベーション住宅(適合R住宅)」発行件数推移
(画像出典:(一社)リノベーション協議会プレスリリース

買取再販住宅が普及している背

(公財)東日本不動産流通機構によれば、2022年の首都圏中古マンションの成約件数は3万5,381件。7年連続で新築マンション供給数を上回っています。2022年に主に販売することを目的としてREINS(レインズ、国土交通省から指定を受けた不動産流通機構が運営している不動産情報システム)に新規登録された首都圏中古マンションの平均築年数は28.46年、中古戸建ては23.72年でした。この築年数は、年々、上昇傾向にあります。中古住宅の増加と高経年化に伴い、買取再販住宅は今後ますます増えていくものと考えられます。

加えて、国も、買取再販事業者の不動産取得税や買主の登録免許税の負担を軽減する措置を設けるなど、買取再販住宅の普及を後押ししています。

買取再販住宅は「当たり前」になっていく

ひと昔前までの買取再販住宅は、リフォームやリノベーションのクオリティにばらつきがあったというのが正直なところです。しかし、国策や当協議会の取り組みなどにより、性能のよい住宅が提供されるように変わってきた今、買取再販住宅は住まいの選択肢の一つとして「当たり前」になりつつあります。

リフォーム済み中古住宅に加え、自らリノベーションする人も今後増えていくものと考えられます。

買取再販住宅の現状と今後の見通し
  • ・買取再販住宅は増加傾向にある
  • ・既存住宅の増加や高経年化、それに伴う国による後押しによって普及が進む
  • ・今後ますます買取再販住宅は「当たり前」になっていく

4. リフォーム・リノベーション済み中古住宅(買取再販住宅)を検討するときに注意することは?

買取再販住宅は、新築物件より安く取得できるうえに、新築物件のように綺麗で整った状態にリフォーム・リノベーションされています。とても魅力的な物件ですが、検討するときには次の点に気をつけましょう。

「見た目」だけが綺麗であればいいというわけではない

前述した通り、住まいは見た目だけ綺麗であればいいわけではなく、配管や下地、構造などの状態まで確認することが大切です。とは言え、これらの部分は、リフォームやリノベーションが終わったあとに見ることはできません。「見えない部分までどうなっているか把握したうえで購入したい」という人には、次のような方法をおすすめします。

「適合R住宅」を選択する

前述したように築年数も工事規模もさまざまな既存住宅のリノベーションに対して、(一社)リノベーション協議会が一定の統一規格を定めて確認、検査をしているのが「適合R住宅」です。

適合R住宅の検査対象は、次の通りです。

  • 給水管
  • 排水管
  • 給湯管
  • ガス配管
  • 電気配線
  • 分電盤
  • 火報設備
  • 下地組(床・壁・天井)
  • 浴室防水

これらの重要インフラに関しては、新規・既存に関わらず規格を満たすもの、または満たすように改修した物件について、2年以上保証することを前提としています。

図表2:適合リノベーション住宅とは
(出典:(一社)リノベーション協議会

「安心R住宅」を選択する

国による「安心R住宅制度」において、既存住宅を専門家が検査し、新耐震基準適合・構造上の不具合・雨漏りが認められない物件に、リフォームや修繕計画などについて情報提供を加えたのが「安心R住宅」です。

中古住宅がかし(瑕疵)保険付きで売られていることを目指し、かし(瑕疵)保険に加入するための検査に適合する住宅をこのように定義づけられました。リノベーションが施されて保証が付いている住宅ということではないですが、かし(瑕疵)保険に加入していることで税制優遇など国の支援制度が利用しやすくなるなどのメリットがあります。

図表3:国が商標登録した「安心R住宅」のロゴマーク
(出典:国土交通省

表層だけが綺麗なのか、見えない部分まで安心なのかは、安心して住むためにはもちろん、資産価値が維持できる物件かどうかを見極めるうえでも必ずチェックしておきたいポイントです。

かし(瑕疵)保険への加入

保証付きの適合R住宅ではない買取再販住宅も「かし(瑕疵)保険(既存住宅売買瑕疵保険)」への加入によって、見えない部分の不具合に備えることができ、購入後の安心につながります。

図表4:かし(瑕疵)保険の仕組み
かし(瑕疵)保険は、万一の補修が必要な場合に高額になりがちな、漏水や建物の構造で重要な部分の不具合を補償する(図:住宅あんしん保証の図を元に中古住宅のミカタ編集部作成)

かし(瑕疵)保険とは、住宅の基本構造部分と雨水の浸入を防止する部分の一定の不具合による損害を補償してくれる保険です。保険に加入するには、第三者の専門家によるインスペクション(建物状況調査)が実施されるため、表層だけではわからない雨漏りのリスクや床下、屋根裏の状況まで把握できます。

買取再販住宅の中には、買主が希望する前に「かし(瑕疵)保険付き」として販売されているケースもあります。かし(瑕疵)保険は、不具合事象があった場合に、補修等を実施する買取再販事業者に保険金が支払われます。補修費用の負担をカバーすることで、不具合に対する事業者の対応がスムーズになることが期待できるでしょう。また、万が一事業者が倒産した場合でも、買主が瑕疵保険法人に直接保険金を請求することができ、補修費用の負担を軽減できます。

図表5:『安心R住宅』 『適合R住宅』 安心区分早見表
(出典: (一社)リノベーション協議会

住宅の「省エネ性能」もチェック

昨今では、断熱性や気密性など、住宅の「省エネ性能」が高い住宅に注目が集まっています。2025年からは、すべての新築住宅に省エネ基準への適合が義務づけられます。省エネ性能が高い家もまた「当たり前」になっていくはずなので、中古住宅を取得する上でも省エネ等の住宅性能をチェックする重要性は高いと言えるでしょう。

買取再販住宅の中でも、徐々に性能向上リノベーションを施した物件が増えつつあります。住宅性能が高い物件を選ぶメリットはまず、暮らしの快適性が上がること。省エネ性能が高ければ、冷暖房効率が高く、夏は涼しく冬は暖かいため、光熱費が削減でき、日常のストレスも軽減します。加えて、住まいの中の温度差が少ないことから、ヒートショックや高血圧症を発症するリスクも下がります。

このように、環境問題、エネルギー問題を含め、住宅の省エネ化、性能向上が求められる時代。(一社)リノベーション協議会では、新たにRマーク「エコ」の基準を策定しています。省エネ性能を1starから3starまで3段階に分け、それに応じた基準を設定。例えば内窓を付けるだけでも効果があるので、少しでも性能を改善できる流れができればと考えています。

「担保評価」も確認して資金計画を立てる

買取再販物件に限ったことではありませんが、物件の築年数や立地によっては、販売価格と住宅ローンの担保評価に差があることもあります。担保評価とは、住宅ローンを融資する金融機関による物件の評価です。

たとえば、1,000万円の担保評価の物件に2,000万円をかけてリノベーションしたとしても、担保評価が3,000万円になるとは限りません。従って、資金計画を立てる際には、販売価格だけでなく、担保評価を確認する必要があるのです。担保評価は金融機関ごとに差もあります。申込時に仲介会社を通して、いくつかの金融機関へ事前に打診を行うことで見えてくるものです。

ただ、以前に比べると、最近では「リフォーム・リノベーション=価値向上」と捉える金融機関がかなり増えました。「フラット35リノベ」など、買取再販住宅の購入に際して金利の引き下げが受けられる住宅ローン商品も増えてきています。

リフォーム・リノベーション済み中古住宅(買取再販住宅)を検討するときの注意点
  • ・見た目だけでなく、内部がどうなっているかも確認する
  • ・住宅の「省エネ性能」もチェック
  • ・信頼できる会社を見極めて購入する
  • ・「担保評価」も確認して資金計画を立てる

5. リフォーム・リノベーション済み中古住宅(買取再販住宅)の長所・短所を理解して、信頼できる会社を見極めよう

国の政策や税制優遇も後押しし、昨今では品質の高い買取再販住宅が提供されるようになってきています。個人間売買に比べてわかりやすい「安心」の指標があり、かし(瑕疵)保険のへの加入も進んでいることから、買主にとってのメリットも増えてきていると言えるでしょう。

一方で、それなりに築年数を経た物件もあるので、見た目だけではわからない配管や構造などに不具合を抱えている可能性も否定できません。信頼できる会社を見極め、検査なども活用しながら「リフォーム・リノベーション済み中古住宅」を検討してみましょう。

樽 宏彰 (たる ひろあき)
(一社)リノベーション協議会 本部事務局 事務局長(所属:(株)インテリックス) 不動産デベロッパー、コンサルティング会社を経て、株式会社インテリックスに入社。その後、IRおよび企画業務、仲介業に携わり、現職。