不動産仲介・リノベーション・お金のプロ5人が、「なかなか話せない」と言う【中古住宅を売却する際に必ずやるべきこと】について本音で議論。石井健(ブルースタジオ)、内山博文(リノベーション協議会)、高橋正典(価値住宅)、田中歩(あゆみリアルティーサービス)、畑中学(武蔵野不動産相談室)の3時間にわたる座談会から抽出した中古住宅売却10の「極意」を紹介します。
1. いい売却の答えは、自分の頭の中に。「目的」からスケジュールや金額の希望を考える
不動産会社は、不動産を売るうえでの「パートナー」にすぎません。当事者である売主自身が売却の目的を明確にすることが、いい売却のファーストステップだと専門家は言います。
石井:
購入とは異なり、売却は「住み替え」や「資金調達」など理由がはっきりしていることが多いと思います。ただ、もう一歩踏み込んで、目的を踏まえたうえで実現するには「どれくらいの期間で売りたいのか」「どれくらいの金額で売れればいいのか」を考えることが大事になってくるでしょう。
畑中:
私はよく「いい売却をしたければ自分自身の頭の中に答えがある」とお伝えしています。もちろん、不動産取引やファイナンス、建物のことなどは難しい側面もありますから、周りの専門家を頼る必要はあります。しかし、「希望」については自分にしかわかりません。
まずは「売りたい理由」を明確にし、その目的達成の方策として、不動産会社とスケジュールや金額を相談しながら決めていきましょう。
2. 一括査定サイトは要注意。その仕組みを理解せよ
不動産がいくらで売れるのかを知るために、一括査定サイトを利用する人もいるのではないでしょうか。しかし、「査定額」と「実際に不動産が売れる金額」は異なります。査定の本来の目的は、決して「少しでも高い査定額を出してくれる不動産会社を見つけるため」ではありません。
田中:
不動産の「売却査定」は、車の「買取査定」のように、この金額で買い取る・売れるということを保証したものではありません。まずは、査定の仕組みを知っておく必要があるでしょう。
内山:
不動産の一括査定は、「安く売られてしまうのではないか」という売主の深層心理に乗じたサービスだと私は考えます。実際に購入するのは買主ですから、たとえば300万円高く査定してもらえたからといって300万円高く売れるわけではないんですよね。
高橋:
売主が少しでも高く売りたいと思うのは当然ですが、高く売るには戦略が必要です。「高く売りたい」というニーズに「高く売れますよ」という言葉だけがヒットしてしまう仕組みが一括査定なのだと思います。
「査定額」がどういったものなのかを理解すれば、査定額が高額かどうかはあまり意味がないと理解できるのではないでしょうか。
3. パートナー選びは「相性」と「戦略」がカギ。会社より「担当者」と「提案」を見よ
売却の相談先を検討するとき「大手不動産会社なら安心」「信頼できる」と無分別に考える人も少なくないようです。しかし、「企業規模」や「知名度」だけで不動産会社を選ぶのは避けるべきだと専門家は口を揃えます。
高橋:
大手不動産会社の担当者は多くの物件を抱えていますから、どうしても優先順位をつけてしまうんですよね。売りたい物件、売りやすい物件には熱心になりますが、その逆もあるわけです。そうかと言って、中小規模の不動産会社が正解とも限りません。大事なのは「戦略」です。競合となる物件とどう戦うのか。いっそ競合物件とは時期をずらして販売することも検討できるかもしれません。こういった戦略を立てられる担当者かどうかを見極めることが大事なのだと思います。
畑中:
不動産会社の中にも、色々な担当者がいます。「この人だ!」という担当者と出会うには、いろいろな人と対話してみるしかないと思います。自分の希望を他の専門家に通訳してくれて、不動産のことを教えてくれるのがいい担当者と言えるのではないでしょうか。
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中古住宅の売却はどこに相談する?プロが教える「信頼できるパートナー」の選び方4.「一般媒介で複数社」は悪手。どこからも放置されてしまう可能性大
売主が不動産会社に販売を依頼する際に締結する媒介契約は「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3つ。このうち、一般媒介契約のみ複数の不動産会社と媒介契約を締結することができます。
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中古戸建て・中古マンションを【売却】するときに知って得する「基礎知識」石井:
一般媒介契約で複数社に販売してもらうのは、絶対にやめるべきだと私は思います。一見すると、複数社に売ってもらったほうが有利なようにも思えますが、不動産会社からすれば他社に先を越されてしまう可能性のある物件。どうしても優先順位は下がります。結果として、どこからも放置されてしまうことにもなりかねません。
内山:
複数社に依頼すると、担当者には「条件が合った人が買ってくれればいいな」くらいの扱いをされてしまうことがほとんどかもしれませんね。
複数社ではなく、1社のみに依頼すべき……だとすれば、この1社を見極める重要性は非常に高いと言えそうです。
5. 査定金額に惑わされるな。販売価格は「売主が決めるもの」と心得よ
高額な査定につい惑わされ、査定金額で売却を依頼する先を決めてしまう背景には、売主の「主体性の欠如」にもあると専門家は言います。
石井:
一括査定の話にも通じますが、そもそも中古住宅の販売価格は「不動産会社に付けてもらうもの」だと勘違いされている人も多いように思います。
内山:
そこなんですよね。私たちは「このときまでに売りたい」「この金額で売りたい」という売主さんの希望も踏まえたうえで査定額を提示しますが、販売価格を決めるのは売主さん本人に他なりません。
「不動産会社が売ってくれる」のではなく、販売の主導権は売主自身にあると心得たうえで売却に臨みましょう。
6. 時間があれば「不動産は売れる」。少しでも早く高く売りたければ、相場を知るべし
不動産を「早く売る」「高く売る」ことの両立は難しいものです。早期かつ高額売却を目指すなら、相場を知ることが求められます。
石井:
基本的に、不動産は何もしなくても売れます。半年以上の時間をかけられるなら、また手続き上の必要性を除けば、不動産会社はいりません。売りたい金額で売り出し、反響を見ながら徐々に値段を下げていけばいいわけですから。ただ、売却に半年も1年も時間をかけられる人ばかりではありません。だから販売活動が必要なのです。
田中:
ある程度の期間で売りたいのであれば、競合物件を見るのが大事になってくるかなと。やはり、相場を逸脱した価格では売れませんからね。その中で少しでも高く売るなら、競合となる物件との条件の「対比」で価格を付けるしかないでしょう。
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一戸建てを高く売るには「正直」な不動産会社を選ぶべし!?売主がすべき6つのこととは競合物件の有無や条件は、売主がもつ物件の売却スピードや売却価格に大きく影響します。時間があるときには、競合物件が売れるのを待って価格などの条件を調整するというのも戦略の一つです。
7.「ホームステージング」は居住中の物件にも効果的。生活感は排除せよ
販売中の物件をプロがインテリアコーディネートして、モデルルームのように演出する「ホームステージング」。中古住宅の取引がさかんな米国では、必ずと言っていいほど取り入れられる売却手法です。専門家は、居住中の物件を売却する際にも、ホームステージングが効果的だと言います。
高橋:
購入を検討している人にとっては、いくら条件などのロジックが合っても「物件の印象のよさ」に勝るものはありません。同様の条件で売り出されている物件でも、やはりホームステージングをしている物件のほうが早く売れやすいですよ。居住中の住まいを売る場合も、貸し倉庫などを利用すればステージングは可能です。
田中:
私も、印象は非常に重視しています。整理整頓、掃除を徹底し、きれいなテーブルクロスをかけるだけでも印象はグッとよくなります。
石井:
住まいのニオイも大切ですよね。私は「内見前に必ず換気してください」と売主さんに伝えます。
内山:
Web上で物件が探される時代ですから、まずいい写真を撮って掲載することも大事になってくるでしょう。写真映えという観点からも、ホームステージングは効果的な施策です。
近年では、写真やバーチャル動画などでステージングできるサービスも見られます。特に早く売りたい場合には、こうしたサービスの利用も検討してみましょう。
8. マンションを売るなら「リノベプラン」も添えるべし
一定の築年数を越えたマンションを購入する人の多くは、リノベーションを視野に入れています。購入検討者に「現状」だけでなく「リノベーション後」をイメージしてもらうためには「リノベプラン」を添えるのが効果的なのだとか。
高橋:
購入検討者にリノベーション後を見える化してあげることで、物件のポテンシャルを感じてもらえるんですよね。VRまで作らなくても、マンションを売るならリノベーションプランと合わせて提案できる不動産会社が理想的だと言えるでしょう。
石井:
早く売りたい人にとっては、かなり効果的なのではないでしょうか。リノベーションプランを添えることで、購入を検討してくれる人の幅も広がると思いますよ。
リノベプランと合わせて提案できる不動産会社が理想的とは言え、建物やリノベーションの知識がある不動産会社ばかりではありません。パートナーを選ぶうえでは「物件の特徴」と「担当者の知識」の相性も考慮すべきでしょう。
9. 戸建てを売るなら「かし(瑕疵)保険」への加入を検討
中古戸建ての建物の状態はマンション以上に千差万別です。その分、買主の不安も大きいと言えるでしょう。買主の不安を軽減するには「検査(インスペクション)」の実施や「かし(瑕疵)保険」への加入が効果的です。
高橋:
検査やかし(瑕疵)保険への加入は買主がすべきという考えもありますが、供給する人がちゃんとしたものを出すというのが日本の文化。売主が検査を実施し、かし(瑕疵)保険にも加入して売り出すというのも一つの選択肢です。
内山:
かし(瑕疵)保険は、売主が契約不適合責任を負うリスクを低減してくれますからね。検査の実施や保険の加入は買主のためと捉えられがちですが、売主のためでもあります。
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10.「最後はウチが買い取りますよ」の言葉に騙されるな
「買取保証」などのサービスを提供する不動産会社も見られますが「売れなくても不動産会社に買い取ってもらえるのなら安心」……とは限らないようです。
高橋:
住み替えなどで売却を焦っている人の足元を見て買取条件を出しているケースもあるので注意が必要です。販売活動はそこそこに、水面化では買取の方向で話が進んでいるなんてケースもあります。そもそも「買取」の仕組みを知らない人も多いようです。
内山:
「買取条件付き媒介」というのを目にすることもありますが、個人的には適正であるかどうかも含めて懐疑的に思っています。
なぜ不動産会社が不動産を買い取るのかというと、買い取った不動産にリフォームなどで付加価値をつけて再販し、利益を出すためです。買取再販の仕組みに問題があるということではありませんが、「買い取る不動産会社も利益を出す前提での買い取りである」ということは認識しておきましょう。
<買取再販住宅についてもっと詳しく>
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