中古住宅のススメ

中古住宅の「賢い」買い方・売り方とは?後悔しないための5つのポイント

どんな住宅にも、一定のリスクはあります。特に中古住宅は建築されてから一定の期間が経過しており、暮らし方やメンテナンス状況も異なることから、商品としての品質にはバラつきが生じます。一方、中古住宅は新築と比較して安価で、選択肢が多いというメリットがあります。安心な中古住宅として購入または売却を実現し、後悔のない取引をするには、どのようにすればよいのでしょうか。

本記事では正しい知識を身につけ、事前に起こり得るリスクと解決方法を知り、「わからない」「知らない」ことによる不安を解消していきましょう。

1. 中古住宅で気になる3つの不安……大丈夫?

中古住宅には新築住宅と比べて選択肢が多く、価格が安いことや、あらかじめ立地や周辺環境、眺望・日照・通風やコミュニティについて確認したうえで購入できるなど、買主にとってさまざまなメリットがあるだけではなく、近年、国の制度など中古住宅の流通の後押しもあり、その売買が促進されています。

一方で、「中古住宅って、本当に大丈夫?」「中古住宅の取引って……ちょっと不安」だと感じる人が買主にも、そして売却する側である売主にも、一定数いるのではないでしょうか。その人たちが中古住宅に不安を感じる理由として主に次のような3つのポイントが挙げられます。

不安1:「資産価値」が目減りしない?将来的にも大丈夫?

将来的な資産価値の推移においては、新築よりも中古の方が購入後の目減りが少ないという特徴があります。それは、住宅の資産価値は新築から5年以内が最も下落する傾向にあるためです。リフォーム・リノベーション費用がかかっても、買主は新築に比べてリーズナブルな価格で購入することができ、以降の資産価値下落の割合も緩やかであることが中古住宅の特徴です。さらに定期的にリフォーム・リノベーションなどでメンテナンスを行っていくことで、将来にわたって資産価値を維持していくことができます。

一方、売主にとっても住まいに必要なメンテナンスを適切に行っていれば、資産価値が大幅に下がる可能性が少ないため、資産価値の下落を理由に売却を急ぐ必要はありません。

図表1:築年数経過による住宅の価格推移イメージ
グラフ
リノベーションによって資産価値を維持・向上させることができる(図:中古住宅のミカタ編集部作成)

不安2:見えない部分の不具合など「建物性能」は大丈夫?

中古住宅は、建築後、一定の期間が経過しており、売主が居住してきた物件です。居住スペースには、多かれ少なかれ劣化や使用感が見られるでしょう。しかし、最も怖いのは主要な構造部分や見えない部分の設備の劣化や損傷です。建築時の不具合や漏水などによる構造部の腐食、配管部分の損傷は、建物の強度低下や雨漏り、水漏れなどのリスクをさらにもたらします。

耐震性については1981年の建築基準法改正以降の「新耐震基準」の物件、さらに2000年の基準改正以降の物件を選ぶことで建築時に耐震基準をクリアしている安心感は得られます。しかしながら、2000年以前の一戸建てなどは、その竣工時に検査を受けていない物件も多いため、必ずしも設計基準通りに建てられていないことも多く、特に壁の中や床下・天井などの隠れて見えない部分の不具合や経年劣化がないかは気になるところでしょう。

このような不安には、まず「検査(インスペクション)」を行い、建物の状況を確認してから売却、購入するようにしましょう。

検査で不具合が確認されたら、リフォームやリノベーションによって修繕をすることが可能です。また、検査や修繕を行う際に「かし(瑕疵)保険」に加入することで、将来的な不安やリスクについても軽減することができます。

不安3:不動産会社、設計会社、工務店など「パートナー選定」どこに相談したらよい?

中古住宅の売主は、多くの場合、一般の人です。安心・安全に取引するため、中古住宅は一般的に不動産会社が仲介しますが、この不動産会社に対して不安を感じている人も少なからずいるでしょう。また、不動産会社が不動産売買のみの対応しかできない仲介会社の場合、リフォームやリノベーションを考えている場合などには、どこに相談すればよいのか、また勝手に工務店や設計会社に相談して大丈夫か、と迷う人もいるのではないでしょうか。

実は、不動産業界には構造としてまだまだ改善すべき問題があり、「信頼できる不動産会社(エージェント)」を見つけることが、売主にとって安心・安全な取引を実現するためのファーストステップになります。

また、買主にとってはよい条件で中古住宅を購入できたと思っても、建築知識が十分でない会社で購入したばかりに、後から不具合が発覚したり、リフォームやリノベーションを行う際の工事費が想定していた金額を大幅に超えてしまったり、という話も耳にします。後悔しないために、買主が不動産会社について確認しておくべきポイントについてチェックしましょう。

中古住宅の不安を解消するためのポイント
  1. 資産価値 実は、新築住宅よりも下落しづらい。リノベーションで維持・向上も
  2. 建物性能 構造、耐震性など見えない部分への不安は検査や保険・保証でカバー
  3. パートナー(不動産会社、エージェント)選定 信頼できる会社の見極めが最重要

2. 後悔しない!中古住宅の「賢い」買い方、売り方5つのポイント

それでは不安を払拭し、後悔しない取引を実現するためにはどうすればよいのでしょうか。

そもそも「よい購入」「よい売却」って?

例えば、物件を安く買えれば「よい購入」、高く売れれば「よい売却」でしょうか?さらに言えば、「安い」「高い」の基準は何をもとに判断したものでしょうか。中古住宅の価格を算定するにはさまざまな基準があり、プロである不動産会社でもその査定金額はバラバラです。買主も売主も周辺の相場は確認するかもしれませんが、中古住宅は基本的には同じ条件のものは一つとしてなく、結果として1対1の取引が成立すればよいと考えると、明確な基準は存在せず、あくまでも“目安”であることが前提です。

基本的には買主・売主がお互いに正しい情報を元に、納得感のある取引にすることが原理原則となります。そのなかで購入・売却をするためには「自分や家族にとってこの購入・売却のゴールは何か」「そのためにはどんな取引ができればよいか」をしっかりと考えておくことが重要です。住み替え前提であれば「価格」よりも「スピードやタイミング」の方を重視すべき場合があります。時間にゆとりがあれば、じっくり腰を据えて自分の希望する条件に合う相手を待つ覚悟も必要かもしれません。

自分や家族にとって「よい購入」「よい売却」とは何かを明確にすること。それを実現するために、正しい知識を身につけ、必要なポイントを押さえて進めること。それこそが「賢い」買い方・売り方だと言えるでしょう。

ここからは買主・売主の両方に必要なポイントを5つ、紹介します。

不動産の売買では、どんな不動産会社(エージェント)に依頼するかが非常に重要です。不動産会社(エージェント)は本来、買主・売主の求める取引を実現するため、価格交渉や契約、決済など「どの物件を買うか」「どのように売るか」を一緒に考え、サポートするための専門知識を持ったプロフェッショナルであるはずです。

買主であれば自身の要望に対して物件のデメリットや懸念点などもきちんと説明してくれるか、売主であればさまざまな状況を判断した上で査定金額に納得のいく説明をしてくれるかなど、買主・売主それぞれの立場に立って誠意を持ってサポートしてくれる不動産会社(エージェント)かどうかをしっかりと見極めて選定する必要があります。特に古い建物の取引ほどその重要性は高まると言えます。

不動産を売る人は、原則的に「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」を負います。売買後に契約に適合していない不具合などが発覚した場合、原則的に買主がその発覚から1年以内に通知すれば、売主に対して追完(契約に適合させるための修繕など)や代金減額などを請求できます。ただし、個人間の売買においては契約不適合に関する取り決めは任意規定です。つまり、契約者同士の同意があれば、免責(責任を問われない)としたり、期間を短くしたり長くしたりすることもできるのです。

この点を理解し、買主・売主がともに納得できる取引となるよう誠意を尽くして契約条件を調整することが大切です。具体的には契約前に重要な不具合などがないかをお互いにしっかりと確認し、万一、引渡し後に不具合が見つかった場合にどうするかを取り決めておきましょう。

不動産の購入・売却を検討する際には、ある程度、相場観を養っておきましょう。相場が全く想像できない状態で売却査定や物件選定をすると「不動産会社(エージェント)から提示された金額=相場」と誤認してしまうおそれがあります。中には、比較サイトなどで情報を得ようとすると、売主に売れるはずもない高額査定を提示して選んでもらおうとしたり、両手取引(1つの不動産会社で売主、買主、双方の仲介をすること)など、その会社にとってメリットのある物件を買主にすすめたりする不動産会社(エージェント)もあるようです。

自衛のためにも、不動産情報サイトや情報誌などで同じエリアや似た条件の物件をチェックして、ある程度の知識を身につけておきましょう。

物件状況を確認する……とは言っても、自身で確認できるのは目の届く範囲だけ。中古住宅は、基礎や配管、屋根裏などに、シロアリ被害や水漏れなどの重大な欠陥が生じている可能性があります。

ここで活用したいのが「検査(インスペクション)」です。インスペクションでは、第三者機関の建築士が住宅の基礎から屋根裏(一戸建て住宅)、外壁、配管などを目視および計測によって調査します。中古住宅の「わからない」「見えない」という漠然とした不安を取り除くことができるでしょう。

最近では、不動産仲介の依頼(媒介契約)を前提にこのインスペクションとあわせて建物保証をつけるサービスや保険などの仕組みが提供されています。

検査の結果、一定の基準を満たしている場合、あるいは発見された不具合や欠陥を修繕することにより「かし(瑕疵)保険」に加入できます(保険加入者は物件を仲介する不動産会社または検査機関)。

かし(瑕疵)保険とは、購入後に発覚した基本構造部分の不具合・欠陥などに対する保証が受けられる保険です。特約により、給排水管なども保証の対象とすることができます。買主・売主双方にとって契約後の安心につながるでしょう。

中古住宅を安心して購入するためにできること
  1. 不動産会社は何をしてくれるのかを知る エージェントを選定する
  2. 買主・売主それぞれの責任を知る 契約不適合責任について知る
  3. 相場を知る 同じエリアや似た条件の物件を調べる
  4. 建物の状況を知る 検査を実施して状況を把握する
  5. リスク回避方法を知る かし(瑕疵)保険に加入する

3. 不動産取引の仕組みを知ることで安心な取引を実現しよう

新築・中古に関わらず、どんな住宅の売買においても、よりスムーズに取引を行うためには、その取引の仕組みや関わる人々の役割を知り、客観的な情報を多く得ることが重要です。取引を賢く進めるためにも、自分が果たすべき責任やリスクを知り、信頼できるパートナー(不動産会社、エージェント)を見つけて、共同作業を積み重ねることです。そして必要な対策をとっていくことで、安心な取引へとつながっていくことでしょう。