中古住宅の購入には、3ヶ月から半年ほどの期間がかかるのが一般的です。実際に購入した住宅に転居するまでには、内覧や購入申込み、ローン審査、売買契約などの手順を踏まなければなりません。また、中古住宅を購入するには、物件価格だけでなく諸費用を準備する必要もあります。
本記事では、中古戸建てや中古マンションを購入するときの流れや諸費用、ポイントをまとめました。
1. 中古住宅購入の基本的な流れと成功のポイント
住宅の購入は、人生でそう何度も経験するものではありません。特に一般の人が売主であることも多いため、初めて中古住宅を購入する場合は購入方法や流れを想像しにくいのではないでしょうか。
「ローンはいつ組むの?」
「申込めば必ず購入できるの?」
「契約したらすぐに住めるの?」
中古住宅を購入するまでの流れとポイントを知っておくことで、これらの疑問や不安を解消し、スムーズな取引につなげましょう。
中古住宅を購入するまでの流れは、次の通りです。
(1) 物件探し、不動産会社(エージェント)の選定
まずは、不動産情報サイトやチラシ、情報誌などから物件情報を集めます。気になる物件を見つけたら、その物件広告を出している不動産会社(エージェント)に問い合わせをする流れが一般的でしょう。ところが、実は、市場に出回る物件は原則として「REINS(レインズ、国土交通省から指定を受けた不動産流通機構が運営している不動産情報システム)」に登録され、ほとんどの不動産会社で物件情報を共有できるように決められています。
そうした場合、この段階でのポイントは「よい物件」を探すことよりも、買主目線で取引をサポートしてくれる「よい不動産会社(エージェント)」を選ぶことだと考えることができます。例えば、同じ物件をいくつもの不動産会社が掲載しているような場合、不動産会社を見極める力がポイントとなります。
また、この段階で不動産会社(エージェント)を決定することで、購入価格やリノベーションコストなどの資金計画を想定しておくことも重要です。場合によっては、金融機関に借入限度額などを見極める事前打診を行うのもよいでしょう。中古住宅購入は、よい物件が見つかり1週間程度で売買契約を締結することも少なくないため、事前の準備はとても大切です。
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多くの場合、不動産会社(エージェント)を通じて、気になる物件を見学(内覧、内見)します。中古住宅は、販売時に売主が居住中であることも少なくないため、不動産会社・売主・購入検討者のスケジュールを合わせて見学する日を決めます。ここでは、現地でしか確認できない情報をしっかりとチェックしておくことが必要です。
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買主に寄り添うバイヤーズエージェント(不動産仲介会社)の本音を聞く!どんな中古物件なら安心できる?一方で、床下や壁の中など目に見えない部分こそ、構造的に重要な部位でもあります。それらについては第三者の建築士などによる検査(インスペクション)を取り入れることで明らかにすることができるので、仲介会社を通じて売主に相談してみましょう。この段階でインスペクションを実施するわけではありませんが、協力してくれる売主や不動産仲介会社かどうかを見極めることがポイントです。
(3) 購入申込み
続いて、購入を決めた物件の売主に対して「購入申込書」を提出します。まだ、この時点では売買は成立していません。この時、リフォーム・リノベーションを前提とする場合は、そのコストも想定の上で購入可能な物件価格を決めることが重要です。申込書は、あくまで売主に対して購入の意思を示すための書類です。申込書には、購入希望額とともに希望の条件なども記載します。もし売主の売却希望額や条件との間に相違があれば、申込み後に交渉が入ります。
ここでのポイントは、価格だけではなくインスペクションにより事前に建物の状況を把握することが可能か、さらに、かし(瑕疵)保険の有無やその加入の可否について確認すること。購入後に万一の不具合があった場合でも、かし(瑕疵)保険に加入していれば安心です。かし(瑕疵)保険は引渡し後には加入することができなくなるため、この段階で確認しておくことがポイントです。
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住宅ローンを利用するには、「仮審査」と「本審査」の2度の審査に通らなければなりません。1度目の仮審査(事前審査)は、主に債務者の返済能力が見られるもので、売買契約前に通過していることが必要です。そのため、取引をスムーズに進めるためには、仮審査の申込みを購入申込み前に早めに済ませておくことが理想です。ローンの審査を事前に済ませておくことで、売主に対してアピールすることにもつながり、有利に取引を進めることができるでしょう。
このタイミングでリノベーションを前提としている場合、相談しているリノベーション会社や不動産会社(エージェント)に概算コストを算出してもらい、リノベーションコストも含めたローン打診ができるように事前に段取りをすることが重要です。
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価格交渉が終わり、住宅ローンの仮審査に通過したところで売買契約となります。売買契約では、契約書への署名・捺印、物件に関する重要事項説明の読み合わせ、手付金の授受などが行われます。手付金額は物件価格の1割ほどが一般的ですが、買主・売主双方の合意があればいくらに設定しても問題ありません。
契約時の最大のポイントは、不動産会社(エージェント)と連携してインスペクションやかし(瑕疵)保険のための検査の実施のタイミングの取り決めのほか、契約書や重要事項説明書の内容、物件状況の詳細、契約不適合責任の範囲やその期間などの不具合発覚の際の取り決め事項など、認識と異なるところがないか、少しでも疑問に感じたところがあれば遠慮なく質問をして疑問を解消し納得のいく内容にしてから契約を行うことです。
この段階で初めて説明を受ける内容も多いため、不動産会社(エージェント)と相談し、しっかりと理解をしてうまく交渉することが大切です。業界の慣例上、売主主導で契約内容が決められることが多いため、流されずに不動産会社(エージェント)と連携し、いい契約を目指しましょう。これ以降は、契約内容の交渉はできなくなりますので、とても重要です。
(6) 住宅ローンの本審査
住宅ローンの本審査は、売買契約の後に行われます。それは、本審査では債務者の返済能力のみならず、住宅ローンを組む不動産の評価も審査の対象となるからです。仮審査は数日で結果が出ますが、本審査の結果が出るまでには2〜3週間ほどかかるため、決済日からスケジュールに余裕を持って手続きを進めておくことがポイントになります。
また、リノベーションを前提とする場合、引渡しまでの間に工事請負契約を締結することも必要となりますので、不動産会社(エージェント)とリノベーション会社との連携も重要となります。
(7) 残代金決済・引渡し
本審査に通過した後、売主、買主、不動産会社(エージェント)、銀行、登記する司法書士などのスケジュールが合う日時に手付金を除いた残代金の決済および物件の引渡しがあります。これをもって不動産の所有権が買主に移行し、取引は完了します。
引渡しのときには改めて契約書や重要事項説明書に記載された内容と物件の状況とに差異がないか、確認をしておくことが重要です。
2. 物件価格のほかにかかる費用や税金は?どれくらい必要?
マイホームの購入にかかるのは、住宅の購入費用だけではありません。中古住宅の取得には、物件価格(リフォーム・リノベーション費用含む)の8%〜10%ほどの諸費用がかかると言われています。
仲介手数料
中古住宅の売買では、不動産会社(エージェント)が仲介するのが一般的です。仲介をしてくれた不動産会社(エージェント)には、仲介手数料を支払います。仲介手数料の上限額は、売買価格(税込)が400万円を超える場合、法律で「物件価格×3%+6万円(税別)」と定められています。400万円以下の場合は取引額に応じて以下の速算式で求めることができます。
取引額 | 報酬額(税別) |
---|---|
売買価格(税込)が200万円以下 | 取引額の5%以内 |
売買価格(税込)が200万円を超える部分から400万円以下 | 取引額の4%+2万円 |
売買価格(税込)が400万円を超える部分 | 取引額の3%+6万円 |
印紙税
不動産の売買契約書は、印紙税が課せられる文書です。税額は、売買価格によって表のように異なります。なお、書面が交付されない電子契約の場合は、印紙税は課せられません。
契約金額 | 本則税額 | 軽減税額 |
---|---|---|
100万円超500万円以下 | 2千円 | 1千円 |
500万円超1千万円以下 | 1万円 | 5千円 |
1千万円超5千万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5千万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
登記費用
不動産の所有権が売主から買主に移ったときに所有権を明確にするには、移転登記の手続きが必要です。移転登記には登録免許税が課せられるとともに、登記を依頼する司法書士の手数料がかかります。また、住宅ローンを組む場合は、不動産に対して抵当権を設定することとなります。抵当権設定も、登録免許税の課税対象です。所有権移転登記、抵当権設定登記、いずれも固定資産税評価額に表の税率を乗じた税額です。
登記内容 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
所有権移転登記(土地) | 2% | 1.5% |
所有権移転登記(建物) | 2% | 0.3% |
抵当権設定登記 | 0.4% | 0.1% |
不動産取得税
不動産を取得した際には、不動産取得税も課せられます。不動産取得税も基本的に固定資産税評価額に税率を乗じて算出されますが、都道府県によって異なる軽減税率が設けられています。詳しくは、都道府県のサイトなどを確認しましょう。
取得した不動産 | 税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
土地 | 3% | 地方税であるため 取得した都道府県の制度を確認 |
建物(住宅) | 3% |
住宅ローンの借入にかかる費用
住宅ローンを借り入れるには、保証料や融資手数料などの費用がかかります。なお、上記は一例としてりそな銀行の「融資手数料型」の住宅ローンの費用を記載しましたが、金融機関やローン商品によって費用は異なります。
保証料 | 不要(保証料は借入金利に含まれる) |
---|---|
融資手数料 | 借入金額×2.2%(税込) |
印紙税 | 2万円(借入金額1千万超5千万円以下の場合) |
事務手数料 | 3万3千円(税込) |
火災保険料
住宅ローンを借り入れる際には、通常、火災保険への加入を求められます。加入できる期間は、最長5年間で、以降は更新加入します。保険料は、補償範囲によって数万円から10万円を超えるものまでさまざまです。
地震保険料
地震保険は、火災保険とセットで加入する保険で、地震保険単独では加入することができない保険です。一般の保険と異なり、政府と民間の損害保険会社が共同で運営・負担しています。保険料は物件の所在する都道府県や建物の構造・性能、保険金額によって変わりますが、数万円程度となることが多いようです。
検査(インスペクション)費用
中古住宅の検査には広義の「インスペクション」のほか、宅建業法で定められた「建物状況調査」、かし(瑕疵)保険に入るための「瑕疵保険検査」があります。インスペクションの相場は5〜6万円程度で、目視で確認できない調査が入る場合は十数万円程度になることもあります。かし(瑕疵)保険に入るには、保険料とあわせて瑕疵保険検査の費用がかかります。
かし(瑕疵)保険料
かし(瑕疵)保険の保険料は物件の広さや保険期間、保険金額などによって異なりますが、一般的には5万円〜8万円程度となることが多いようです。
引越し代や家具・家電購入費など
ほかにも住宅購入の際は、新生活を始めるまでに引越しをしたり、新居に応じた家電が必要になったり、新しい家具に買い替えたくなったりすることでしょう。それらの費用をあらかじめ資金計画に組み込んでおくことで、予定外の出費を抑えることができます。
3. 入居後にもお金がかかる!「ランニングコスト」の見立て方
住宅を購入すると、次のようなランニングコストもかかってきます。合計すると概ね物件価格の1.5%〜2%程度の費用(物件価格3,000万円の場合、45万円〜60万円程度)が年間必要になる計算です。
固定資産税
固定資産税は1月1日時点で土地や建物などの固定資産を所有している人が納める税金で、税額は土地と建物のそれぞれに対し、築年数や立地、床面積、敷地面積、構造などから総合的に判断して決定されます。固定資産税評価額(概ね売買価格の50〜80%程)に自治体が決めた税率(標準税率は1.4%)をかけた額が税額となり、目安として物件価格の約0.3%〜1%程度となります。
都市計画税
都市計画税は市街地に不動産を所有する際に、固定資産税とともに1年ごとに課税されるものです。固定資産税評価額に税率を乗じた税額となり、税率は市町村によって異なりますが、概ね0.3%程度となっており、固定資産税の1/5程度の税額になります。
修繕(リフォーム・リノベーション)費用
(一社)住宅リフォーム推進協議会の2021年度調査によると、平均のリフォーム費用は341.3万円だと言われます。相場は築年数、面積、エリアなどによって異なるため一概には言えませんが、例えば10年に1回、前述の費用でリフォームを行ったとすると、年間34万円程度の積立が必要だという計算になります。
マンションの場合、共用部の修繕は次で紹介する修繕積立金でまかなわれますが、専有部(自室)の修繕には、一戸建て同様に自己資金もしくはリフォームローンなどによる調達が必要となります。
(マンションの場合)管理費、修繕積立金
マンションを購入した場合は毎月一定の管理費と修繕積立金を管理組合に納めます。金額はマンションによって異なり、大規模修繕計画の内容等に応じて、またマンション内でも住戸の広さなどに応じて管理組合で決定されます。
(主にマンションの場合)駐車場代
マンションで自家用車を所有している場合や一戸建ての敷地内に駐車スペースがない場合は、月ごとに駐車場代がかかります。マイカーを保有している人、保有を予定している人はその費用も見込んでおきましょう。
4. 住宅ローン控除や中古住宅に関する補助金、税制優遇を活用しよう!
このように多額の費用が必要になる住宅購入ですが、国は住宅購入を促進するために、中古住宅購入や性能を向上するリノベーション費用、各種税金の負担を軽減する住宅ローン控除やリフォーム減税などの制度を拡充させる方針です。また、各地方自治体でも年々、変化していますが、住宅購入やリフォームに活用できる独自の補助金などがあります。
住宅ローンやお金についてもっと詳しく
中古住宅の購入で活用できる税制優遇は?住宅ローン控除についても知っておこうこれらの制度は申請しなければ適用されないものがほとんどなので、見落としがないよう、事前にしっかりとチェックして、フル活用できるようにしましょう。
5. 購入後にトラブルが発生したら?そのときどうする?
これまで紹介した流れやポイントに沿って住宅を購入しても、不動産売買のリスクを100%事前に回避することは難しいかもしれません。もし購入後にトラブルが発生してしまった場合は、次のような方法で対処しましょう。
売主に契約不適合責任を追及する
トラブルが契約内容に適合しない物件の欠陥や不良であれば、売主に対して契約不適合責任を追及できます。追及するには、原則的に不適合を知ったときから1年以内に売主に通知しなければなりません(売主が宅建事業者の場合は引渡しから2年以上の定められた期間内)。ただし、契約内容によっては期間の長短があるので、まずは契約書を確認しましょう。気になる箇所は、契約不適合責任の期限をむかえる前に調査をすることもおすすめです。
契約不適合責任の追及方法は、次の4つです。
- 追完請求:契約に適合するように補修・改修などをしてもらう
- 代金減額請求:修繕しない・できない場合に認められる
- 損害賠償請求:契約不履行によって被った損害を請求する
- 契約解除:請求に応じない・目的が達成できない場合
不動産会社(エージェント)に相談する
契約に関するトラブルが発生してしまった場合は、仲介した不動産会社(エージェント)に相談してみましょう。契約不適合責任を追及する際にも、まずは不動産会社(エージェント)に連絡したほうがスムーズに物事が進むはずです。
解決できない場合は第三者機関に相談を
- 買主・売主間では解決できない
- 不動産会社(エージェント)に問題がある
- 売買契約とは関係ない隣人トラブルなど
このようなトラブルは、第三者機関に相談することをおすすめします。国が指定する住まいの相談窓口「住まいるダイヤル」のほか、公的機関や業界団体が無料で相談に応じる窓口を設置していることもあります。
(参考)住宅リフォーム・紛争処理支援センター「住まいるダイヤル」
なお、かし(瑕疵)保険付きの住宅は、「住宅紛争処理制度」が利用できます。住宅紛争処理制度とは、万一、住宅売買の当事者間でトラブルや紛争が発生してしまった場合に、住宅専門の裁判外紛争処理が受けられる制度。申請手数料は1万円程度で、原則として現地調査費などのその他の費用はかからずに専門家による紛争処理を受けられるので、トラブルに備える目的としても、かし(瑕疵)保険への加入は効果的です。
6. 流れを知って満足のいく中古住宅の購入を目指そう
スムーズに取引を進めるには、あらかじめ中古住宅購入の流れや必要な諸費用等を把握し、不動産会社(エージェント)と連携しながら、いつまでに何をすべきなのか、何を準備しておくべきなのかを明らかにしておくことが大切です。さらに、建物の状況を知るためのインスペクションや、将来的な安心を担保するための保険、保証の仕組み等を活用することで、より満足度の高い取引につながるでしょう。